米上院で暗号資産の包括規制法案「Clarity法案」の審議が停滞する中、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)が、既存の権限を使ったルール整備を前倒ししている。米CNBCが22日(現地時間)に報じた。
議会での立法が足踏みするなか、両当局はそれぞれ具体策を打ち出し始めた。SECは、Clarity法案が上院で進展しなかった2日後、一部のトークン化株式取引を認めるための暫定的な道筋を示す命令を公表した。市場では、金融市場を24時間取引に近づける動きの一環と受け止められている。
同日、CFTCは暗号資産関連の規則案をホワイトハウスの審査に送付した。内容の詳細は明らかにしていないが、米行政管理予算局(OMB)は当該規則案が審査待ちの状態にあることを確認した。
暗号資産業界はこれまで法案成立を支持してきたが、足元では規制当局によるガイドライン整備への期待も強まっている。ブロックチェーン協会の最高経営責任者(CEO)で、元CFTC委員のサマー・マーシンガー氏は「伝統的金融の参入は、規制の不確実性によって阻まれている」と指摘した。
そのうえで同氏は、「規制当局が一定の確実性を示せば、投資の拡大や伝統的金融との統合が進み、業界の成長も続く」との見方を示した。
議会立法を待つ余裕はないとの声も出ている。Coinbaseのブライアン・アームストロングCEOは、9月15日に上院の手続き採決が不成立となった後、「この段階では、もはや議会と上院を待てない」と述べた。
上院銀行委員会のティム・スコット委員長も、議会が法整備を終えるまでの間、連邦機関がデジタル資産に関する「明確なルール」を示すべきだと求めた。
もっとも、連邦機関によるルール策定が短期間で進むとは限らない。CFTCは今後の規制方針について、マイケル・セリック委員長の9月16日付の声明を示した。
セリック氏は、ドナルド・トランプ大統領が将来にも適用可能な暗号資産の市場構造規制を約束したとしたうえで、CFTCは既存の法的権限の範囲内でその作業を支援すると明らかにした。
SECも、投資助言会社の顧客資産やファンド資産のカストディ規則の現代化を検討しており、その対象には暗号資産への対応も含まれると説明している。
規制当局内では、議会立法が行き詰まる可能性をあらかじめ織り込んでいたとの見方もある。キャロライン・ファム元CFTC委員長代行は、当局としての「プランB」は当初から用意されていたと語った。
同氏によれば、トランプ政権2期目の発足後に両機関が進めてきた作業には、こうした事態を見据えた対応が反映されていた。2025年7月に始まった「プロジェクト・クリプト」を通じて、証券規則の現代化とSEC・CFTC間の暗号資産ルールの整合が進められてきたという。
ファム氏はまた、2025年8月にCFTCが大統領のデジタル資産市場ワーキンググループによる勧告の実行に着手すると明らかにしていた。
ワシントンで連邦レベルの規制枠組みが揺らぐ一方、州政府と連邦政府の権限を巡る対立も強まっている。9月14日には、超党派の州司法長官連合が、Clarity法案は州の証券市場規制権限を弱めるとして、上院銀行委員会に反対書簡を送った。
同連合は、州政府は住民を略奪的な詐欺行為から守るために必要な手段を引き続き保持すべきだと主張した。
一方、ブルッキングス研究所のアーロン・クライン上級研究員は、全国規模かつ国際的な資本市場を州政府が規制するのは適切ではないとの見方を示した。そのうえで、資本市場規制は連邦レベルで担うべきだとしつつ、詐欺や犯罪の摘発では州政府も大きな権限を持つと述べた。
連邦レベルの枠組みが整っていない現状では、州政府が決済処理の監視や犯罪者の訴追により積極的に関与する必要があるとも指摘した。
これに対し、マーシンガー氏は、州政府による執行は犯罪が起きた後の対応になりやすい点を挙げた。州司法長官が訴訟に踏み切る前に、まず連邦レベルの監督が機能すべきであり、それによって悪意ある行為者の介入や住民被害を抑えられると述べた。
政治面では中間選挙も争点として浮上しているが、Clarity法案を巡る議論が完全に終わったわけではない。トム・ティリス上院議員は、これまでの反対票を修正し、法案の再検討に向けた同意を改めて提起できる手続きを確保した。
このため、米国の暗号資産規制は当面、議会での法整備と、規制当局が既存権限に基づいて進めるルール整備が並行して進む構図が続く見通しだ。