写真=Shutterstock

ヘッドホンで再生中の音声を、機器内部から漏れる電磁信号を通じて外部から復元する手法を、香港の研究チームが実証した。Bluetooth通信そのものを破るのではなく、復号後の回路を狙うため、暗号化だけでは防ぎにくいという。

TechRadarが21日(現地時間)に報じたところによると、香港科学技術大学(広州キャンパス)と香港理工大学の研究チームは、セキュリティ学会「USENIX Security 2026」で「InjectEave」を発表した。市販機器11種類を調べた結果、有線・無線ヘッドホンの再生音や有線電話の通話音、一部スマートホーム機器の動作状態を復元できたとしている。

この手法では、外部から標的機器に電波を照射する。機器内の増幅器や電力変換器などの非線形回路によって、再生中の音声信号が照射した電波に乗り、配線やケーブルから再び放射される。その漏えい電磁信号を受信することで、音声を復元できる仕組みだ。研究チームは、Bluetooth通信の暗号化とは別の経路を突く攻撃だと説明している。

研究チームによると、壁越しでも音声を復元でき、最大30mの距離でヘッドホンの音を聞き取れた。ただし、この30mという結果は、10W級の高出力送信機を継続的に使った条件で得られたものだ。一般的な試験では、機器によって約1〜6mの距離で信号を捉えたとしており、テスト信号に比べて実際の音声を鮮明に復元するのは難しいという。なお、壁越しの実験と最大距離の実験は同一条件ではない。

取得できる情報の範囲にも差がある。無線ヘッドホンでは、ユーザーが聴いている音は捉えられたものの、マイク入力音声まで取得できたわけではない。一方、有線ヘッドセットではマイク入力信号が漏れる可能性も確認したが、検知距離は短かった。攻撃に先立ち、標的と同じ機種を事前に分析する必要がある点も制約になるとしている。

研究チームはメーカー側に脆弱性を通知し、公開コードから攻撃に関する一部情報を削除した。シールドやフィルタリングといったハードウェア対策で露出は抑えられるものの、完全な防御は保証できないとしている。今回の研究は一部機器を対象にした実験結果であり、すべてのヘッドホンが30m先から盗聴されることを直ちに意味するわけではない。

キーワード

#セキュリティ #盗聴 #電磁信号 #ヘッドホン #USENIX Security 2026 #スマートホーム
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.