写真=Ceerが公開した「Exobot」

サウジアラビアの自動車産業育成が本格化してきた。サウジの自動車メーカーCeerは21日、旗艦EV「Exobot」のセダンとSUVを公開した。脱石油依存を掲げる国家戦略「ビジョン2030」の中核案件の1つとして、2030年までに車種を7モデルへ広げる方針だ。

Ars Technicaなど海外メディアによると、Ceerはサウジ政府系ファンドPublic Investment Fund(PIF)とFoxconnの合弁会社。今回公開した2モデルを通じて、今後の製品ラインアップの方向性を示した。一部モデルはハイブリッド車とする計画もある。

重点市場はまず、湾岸協力会議(GCC)地域を想定する。もっとも、需要が見込めれば対象市場を広げる考えも示した。車両は欧州や北米での認証取得も見据えて開発しており、当初から国際基準への適合を意識して設計したとしている。

Ceerは差別化要因として、高性能、デジタル体験、現地生産を挙げる。Exobotには112kWhのバッテリーパックを搭載した。航続距離は旧NEDC基準で、SUVが500km超、セダンが600km超。800Vアーキテクチャを採用し、急速充電では約30分で80%まで充電できるという。

公開イベントでは、Exobotの最高出力を1111馬力、最大トルクを1500Nmと説明した。トライモーターをベースにしたトルクベクタリングシステムを備え、0~100km/h加速はセダンが2秒強、SUVが2.4秒。エアサスペンションはオプション設定とする。

車内は大型ディスプレイを前面に押し出した構成とした。ダッシュボード全体にまたがる48インチのデジタルディスプレイのほか、10.4インチのセンター操作画面、後席向け8インチディスプレイを搭載する。

車載ソフトには、Foxconnなどと共同開発した独自知財ベースのインフォテインメントシステムを採用する。Ceerの最高技術責任者(CTO)、マーカス・ライトナー氏は、Apple CarPlayとAndroid Autoにも発売当初から対応すると述べた。無線ソフト更新により、性能や航続距離の改善にも対応できる設計だという。

デザイン面では、サウジのアイデンティティを意識した。前後のライトバーには32個の独立要素を採用し、サウジアラビアが統一された1932年を表現したとしている。電動で透明度を調整できるガラスのほか、「シャヒーン・ウィング」ドア、高温環境に対応する「ヘイロー・クーリング」機能も盛り込んだ。

経営陣によると、開発初期から既存の完成車メーカーとは異なる方向性を求められていた。Ceerの最高経営責任者(CEO)、ジェームズ・デルーカ氏は、初期のデザインブリーフィングでサウジ皇太子から、既存製品とは異なる道を進むよう求められたと明らかにした。デルーカ氏はその言葉として、「世界が左へ行くなら、我々は右へ行く」と紹介した。

技術面でも自信を示す。ライトナー氏は、トライモーターやトルクベクタリング、エアサスペンション自体は珍しくないとしたうえで、Ceerの強みはそれらを統合し、走行体験全体の完成度を高める点にあると説明した。

Ceerの狙いは、単なる車両販売にとどまらない。サウジ西部のジッダ北部にあるキング・アブドゥラ経済都市に専用の生産団地を整備し、協力企業も周辺に集積させる計画だ。サプライチェーンを含む生産基盤づくりを進めることで、産業育成につなげる考えだ。

計画通りに進めば、2034年までに直接・間接で3万5000件の雇用創出を見込む。サウジ政府は「サウジ・メイド」政策の下で内需向け製品の現地生産を後押ししており、Ceerはその象徴的な製造案件として位置付けられている。

今後の焦点は、量販モデルの価格競争力と国内市場の反応になりそうだ。今回の2モデルはブランドの象徴となる旗艦車だけに、今後投入する大衆向けモデルが、サウジ市場で販売される中国ブランド車に対してどこまで競争力を確保できるかが鍵を握る。

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