写真=Reve AI

OpenAIやAnthropicなど外部のAIモデルに頼らず、自社モデルを開発するスタートアップが増えている。コスト削減に加え、大手AI企業への依存を抑え、技術面の主導権を確保したいという狙いがある。オープンソースやオープンウェイトモデルの活用が進み、これまで資金面で参入が難しかった領域でも、内製化が現実的な選択肢になりつつある。

企業価値156億ドルとされるリーガルAIスタートアップのHarveyは8月、中国Moonshot AIのオープンウェイトモデル「Kimi K3」をベースにした独自AIモデル「Harvey Tenet」を投入した。外部モデルに依存したままでは収益性を高めにくいことが、自社開発に踏み切る一因になったとみられる。

Bloombergが最近報じたところによると、Harveyは3月にAIエージェントを刷新した後、顧客の利用が急増する一方で、売上総利益率が大きく悪化した。年初に約50%だった同利益率は、6月にはマイナス50%まで落ち込んだという。

これは、利用拡大がそのまま採算悪化につながる構造を示している。その後、HarveyはAIの利用方法を見直し、売上総利益率は再びプラス圏に戻ったと、Bloombergは関係者の話として伝えた。

医療テックのAbridgeも、NVIDIAのオープンソースモデルを基に、臨床分野に特化した独自のファウンデーションモデルを開発している。AIカスタマーサポートを手がけるDecagonは、問い合わせ全体の80%を自社モデルで処理する段階に入った。

フィンテック分野でも同様の動きが出ている。RampとRogoは自社モデル開発を検討しており、Rampは6月に7億5000万ドルを調達した後、独自モデルの開発を視野に入れた。

コーディング分野では、現在SpaceX傘下にあるCursorと、企業価値480億ドルと評価されたCognitionが、カスタムモデルを公開している。

デザインソフトのCanvaも、コスト削減策の一環として、OpenAIやAnthropicの小型モデル、オープンソースモデルへの切り替えを進めるとともに、自社モデル開発にも乗り出した。The Informationによると、共同創業者のクリフ・オブレヒト氏は、AI導入前は無料ユーザー向けサービスの提供コストが極めて低かったものの、導入後はコストが大きく膨らみ、収益構造が変わったと説明した。その上で、「いまはAI事業で収益性、あるいは収益性確保への道筋を示すべき局面にある」と述べた。

これまでAIモデルの開発には巨額の資金が必要で、スタートアップにとっては参入障壁が高かった。ただ、オープンソースやオープンウェイトモデルを活用しやすくなったことで、用途に合わせたカスタムモデルの開発は現実味を増している。

Rampの共同CEO、カリム・アティエ氏は「1年前なら自社モデル開発は現実的な話ではなかったが、いまは試す価値が出てきている」と語った。

Sequoia CapitalやGeneral Catalystなど、スタートアップに出資するベンチャーキャピタルもこの流れに前向きだ。Bloombergによると、自社モデルの開発によって、企業は主要コストの一つを抑えながら、OpenAIやAnthropicへの依存を減らし、技術面の統制力を高められるという。

一方で、こうした潮流に慎重な見方もある。Anthropicに投資するMenlo Venturesのマット・クレーニング氏は、「すべての企業にカスタムモデル開発が適しているわけではない。自社モデルには専門人材が必要で、初期コストもかさむ。企業によっては、単なるマーケティング手段にとどまる可能性もある」と指摘した。

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