KakaoTalkやToss、Kakao Pay、OneStoreなどで、アプリを別途インストールせずにそのまま遊べるH5ゲームの配信が広がっている。Google PlayやApple App Storeを介さずに利用できることから、モバイルゲームの新たな流通経路として注目が集まっており、ゲーム会社とプラットフォーム事業者の参入も増えている。
既存IPの再活用と配信先拡大、ゲーム会社の新たな打ち手
ゲーム会社がH5に注目する理由の一つは、参入障壁の低さにある。ダウンロードやインストールの手間が不要で、初回起動までの導線を短縮できるためだ。特に、短時間で遊べるパズル、アーケード、カジュアルゲームとの相性が良い。
既存タイトルを再活用しやすい点も特徴だ。NPTUNEは現在、グローバルで約10のプラットフォームに対し、50本超のネイティブゲームをH5化して提供している。配信先はLINE、Toss、KakaoTalk、Kakao Pay、OneStore、YouTube、TikTokなどだ。
代表例の「無限の階段」は、従来270MBだったタイトルをH5化し、容量を約33MBまで圧縮した。30秒超だったロード時間も10秒未満に短縮。初回起動時に必要最小限のリソースだけを先に読み込み、残りはコンテンツデリバリーネットワーク(CDN)経由で必要に応じて呼び出す方式を採用した。
実績も出始めている。KakaoTalk向けに展開した「無限の階段」は、サービス開始から1週間で人気ランキング1位を記録。「無限のシューティング」「無限の農場」「無限の牧場」も人気ランキングでトップ10入りした。
Wemade Playも、既存モバイルゲームの他プラットフォーム展開を進めている。「アニパン2」のWeb版は今年1月、Tossの「App in Toss」で1日平均利用者数が約5万人、累計プレイ時間は約1万時間となり、全体6位、パズル部門3位を記録した。
新作の開発に加え、既存ゲームを別プラットフォームに再展開することで、ユーザー接点と収益機会を広げる動きが強まっている。
KakaoTalk、Tossに続きOneStoreも参入 受け皿が拡大
H5ゲームを受け入れるプラットフォームは、メッセンジャー、金融サービス、アプリマーケットへと広がっている。
Kakao Gamesは6月、KakaoTalkの「もっと見る」タブに新設したH5ゲームプラットフォーム「Game Chip」で、カジュアルゲーム25本の提供を始めた。内訳はKakao FriendsのIPを活用したゲーム6本と、カジュアルゲーム19本。いずれもKakaoTalk内でそのまま起動できる。
Tossも「App in Toss」を通じて、ゲームを含むミニアプリのエコシステム拡大を進めている。Tossによると、昨年7月の正式リリース時に約100だった提携ミニアプリは、今年8月に1万件を超えた。月間訪問者数は約400万人規模という。すべてがゲームではないものの、金融アプリ内で外部コンテンツやサービスを提供する新たなエコシステムが形成されつつある。
Kakao Payもミニゲームサービスを運営している。ユーザーがゲームやミッションをこなすとKakao Payポイントを受け取れる仕組みで、NPTUNEもパートナーとして参加し、自社IPや提携タイトルを供給している。
従来型のアプリマーケットを手がけるOneStoreも、H5ゲームプラットフォーム「OnePlay」を打ち出した。NPTUNEはOnePlayに、「無限の階段」を含むH5ゲーム18本を提供している。内訳は「無限の」シリーズ6本と、カジュアルゲーム12本だ。
OneStoreの動きは、H5ゲームの流通が既存アプリマーケットの外側だけで広がっているわけではないことを示している。アプリのダウンロードとインストールを前提としてきた事業者も、H5向けサービスを別建てで整備し、インストール型とインストール不要型を併存させる方向に動き始めた。
現時点では、H5の拡大は既存アプリマーケットを置き換えるというより、モバイルゲームの流通手段を一つ増やす流れとして進んでいる。
中国のミニゲーム市場が先行事例に 成長余地を示す
海外では、中国のミニゲーム市場がインストール不要型ゲームの成長可能性を示す先行事例として注目されている。WeChatやDouyinなどのスーパーアプリ内で、別のゲームアプリをダウンロードせずに即時起動できる仕組みで、韓国で広がるH5ゲームと利用形態が近い。
もっとも、中国のミニゲーム市場と、韓国でH5ゲームと呼ばれる領域は完全に同じではない。中国ではWeChatやDouyinなどのスーパーアプリにおけるミニプログラムのエコシステムを軸に市場が成長してきたのに対し、H5はゲーム実装に使うWeb技術を起点とした区分だからだ。
中国音像デジタル出版協会が公表した「2025中国ゲーム産業報告書」によると、2025年の中国ミニプログラムゲーム市場の売上高は535億3500万元で、前年から34.39%増えた。市場構造は韓国と異なるものの、既存プラットフォーム内でインストールなしにゲームを提供するモデルが、大規模市場へ成長し得ることを示す事例といえる。
韓国のH5ゲーム市場は、なお立ち上がり段階にある。KakaoTalk、Toss、Kakao Pay、OneStoreなど配信先は増えているが、既存アプリマーケットを代替するほどの市場規模や売上が形成されたとみるのは早い。今後の焦点は、流通先の数そのものより、各プラットフォーム上で継続的な利用と売上をどこまで積み上げられるかにある。
業界関係者は「H5ゲームは既存アプリマーケットの代替というより、すでにユーザーが集まっているプラットフォームへ流通経路を広げられる点に意味がある」と指摘。「今後は参入件数そのものではなく、各プラットフォームでユーザーと売上をどれだけ継続的に確保できるかが、市場拡大のカギになる」と話した。