豪州で初めて、8時間連続放電に対応する長時間型の系統用蓄電設備が営業運転を開始した。昼間に余剰となる太陽光発電の電力を蓄え、夕方から夜間にかけて供給することで、再生可能エネルギー主体の電力網で生じやすい需給の偏りを和らげる役割が期待される。
Electrekが18日(現地時間)に報じたところによると、ドイツのエネルギー大手RWEが豪ニューサウスウェールズ州で整備した「リモンデール・バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)」が、登録手続きを終えて運用を開始した。
同設備はTeslaの蓄電システム「Megapack」144台で構成し、出力50MW、蓄電容量400MWh。ニューサウスウェールズ州南西部のバラナルド近郊に立地し、既存のリモンデール太陽光発電所と一体で整備された。系統運用機関AEMOの最終承認を受け、すでに営業運転に入っている。
特徴は、充放電で出力を分けた設計にある。充電時は約100MW、放電時は50MWとし、一般的な系統用蓄電池に比べて充電速度を高める一方、放電は長時間にわたって行えるようにした。
この設計により、昼間の太陽光発電で生じた余剰電力を約4時間で蓄えた後、夕方の需要ピークから夜間にかけて最大8時間供給できる。昼間は余剰が出やすく、日没後に供給が細りやすい太陽光発電の弱点を、蓄電池で補う狙いだ。
豪州ではすでに大規模な蓄電設備の導入が進んでいるが、長時間放電に対応する案件は相対的に少なかった。初期の系統用蓄電池は、系統安定化や高速応答を主目的とする1〜2時間級が中心で、足元では4時間級の導入が広がっている。
リモンデール・バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、そうした流れを上回る8時間級の長時間蓄電設備として、再生可能エネルギー由来の電力を単に蓄えるだけでなく、需要の高い時間帯へ移すことに重点を置いた案件と位置付けられる。
事業化にあたっては、長時間蓄電設備の普及を後押しする政策支援も適用された。リモンデール・バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、ニューサウスウェールズ州の電力インフラ・ロードマップに基づいて初めて実施された長時間蓄電設備の入札で、唯一の落札案件に選ばれた。
さらに、長期エネルギーサービス契約を通じて、一定水準の収益を下支えする仕組みも導入された。大規模な長時間蓄電池への投資や資金調達を支える措置という。現在は、同様の制度支援を受ける8時間級バッテリープロジェクト2件も後続手続きを進めている。
RWEは事業初期から、リモンデールを長時間エネルギー貯蔵拡大の先行事例として打ち出してきた。RWE Renewables Europe & AustraliaのCEO、カトヤ・ビュンシェル氏は、プロジェクト承認当時、リモンデール・バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)への投資決定と供給契約の締結を前進と評価していた。
Teslaは本プロジェクトにMegapackを供給した。発電所の補助設備の構築はVena Energy Solutionsが担った。
Teslaのエネルギー貯蔵事業の拡大という観点でも、リモンデール・バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は注目される。Teslaは最近、米テキサス州で500MWh規模のMegapack蓄電設備を稼働させ、英国でも1GWh規模のプロジェクトを進めている。リモンデール・バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、単純な設備容量の積み増しではなく、電力を時間帯間で移す用途に主眼を置く。昼間の相対的に安価な再生可能エネルギー電力を吸収し、需要が高まる夕方から夜間に供給する設計だ。
長時間蓄電設備の導入が広がれば、太陽光発電量の多い時間帯の余剰電力を有効活用しやすくなり、再生可能エネルギーの変動性を補う手段にもなる。供給が不足する時間帯に蓄電池を活用できるため、化石燃料火力への依存を抑える方策の1つとしても期待される。
今回の稼働は、豪州の系統用蓄電池が短期の系統安定化中心から、再生可能エネルギー電力を長時間蓄え、需要の高い時間帯へ振り向ける用途へ広がっていることを示す事例といえる。今後は、ニューサウスウェールズ州で進む後続の8時間級バッテリープロジェクトが実際の営業運転に結び付くかが、長時間エネルギー貯蔵市場の焦点となりそうだ。