Strategyのマイケル・セイラー会長は、米上院でデジタル資産業界が注目していたクラリティ法案が否決されたことについて、業界にとって一概に悪材料ではないとの見方を示した。立法は権利を明確にする一方で、産業に不利な制約まで固定化しかねないと指摘している。
Bitcoin Magazineによると、セイラー氏は20日(現地時間)、X(旧Twitter)への投稿で「立法は権利と同じくらい容易に制約も恒久化し得る」との認識を示した。
米上院では、デジタル資産業界が長年求めてきたクラリティ法案が採決にかけられたが、賛成49票、反対50票で否決された。
同法案は、デジタル資産を証券、商品、ステーブルコインに分類し、それぞれの監督権限をどの規制当局が担うかを明確化する内容だ。
市場では法的枠組みの明確化を求める声が強い一方、セイラー氏は法案成立の遅れ自体を悲観する必要はないとみる。法整備は業界に確実性をもたらす半面、不利な条項まで制度として固定化する恐れがあるためだ。
同氏は特に、法案が成立していなくても規制当局によるルール整備が進んでいる点を重視する。米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)は、立法とは別に規制の整備を進めているという。
セイラー氏は「行政府には金融市場の近代化を進める意思がある」とした上で、「今後2年間で、より良い金融商品を人々に届けるべきだ」と述べた。
また、自由市場を軸にした産業拡大の重要性も強調した。「デジタル資産業界は自由市場の中で迅速にイノベーションを進め、米国と世界経済にとって可能な限り大きな価値を生み出すべきだ」としている。
規制当局が実務ルールを先行して整えれば、企業は法案の成立を待たずに事業展開を進められるとの考えも示した。
その根拠として、すでに打ち出された措置にも言及した。SECは一部のトークン化株式のオンチェーン取引を巡り、条件付きの救済措置を提示しており、CFTCトップも法案の有無にかかわらず対応を進める意思を示しているという。
セイラー氏は、こうした動きが暗号資産企業に必要な規制の枠組みを提供し得るとみている。
一方で、クラリティ法案の一部条項が業界にとって必ずしも追い風ではない点も指摘した。決済用ステーブルコインの保有者に対する支払いに制限を設ける提案は、デジタル資産エコシステムの発展に資さないと主張した。
法案が成立したとしても、産業成長の足かせとなる条項が盛り込まれる可能性がある、という問題意識を示した格好だ。
政治面では、同法案を巡る攻防が続いてきた。ドナルド・トランプ大統領は先月、議会に法案通過を促しており、これがビットコイン相場の上昇を後押しした要因の一つとみられていた。
これに対し共和党は、民主党が法案審議を意図的に引き延ばしているとして、この数カ月にわたり批判を強めてきた。
議論の背景には、バイデン政権下での規制姿勢がある。当時、規制当局は未登録証券の販売を理由にデジタル資産企業へ制裁金を科しており、業界側は取締り先行ではなく、明確なルール整備を求めてきた。
もっともセイラー氏は、今回の採決結果について重要なのは立法の空白そのものではなく、実際にどのような規制が整備されるかだとの見方を示している。