NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が、人工知能(AI)の危険性を巡る見方や追加規制の必要性に否定的な考えを示した。AIの開発減速を求める声についても、「科学に基づいていない」と反論している。
米ITメディアThe Vergeが20日(現地時間)に報じたところによると、フアンCEOは米CBSの番組「サンデー・モーニング」のインタビューで、「AIが世界の終わりになる可能性は0%だ」と語った。
AIの危険性を強調する議論についても、フアンCEOは批判的な立場を示した。人々の不安を過度にあおるのは不要であり、無責任だと述べ、AIを巡る恐怖感は過剰に膨らんでいるとの認識を示した。
AI開発のスピードを落とすべきだとの主張にも反対した。Anthropicのダリオ・アモデイCEOやOpenAIのサム・アルトマンCEOらが唱える減速論について、「科学に基づいていない」と指摘。業界内で広がる安全性への懸念に、明確に異を唱えた格好だ。
新たな規制の導入についても否定的だった。一部AIモデルが制御を外れたり、他社へのハッキングに関与したりした事例が取り沙汰される中でも、新たなルールや法律、ガイドラインは必要ないとの見方を示した。AI産業の拡大にブレーキをかけかねない政策論議には距離を置いた。
こうした発言の背景には、NVIDIAの事業構造もあるとみられる。同社はAIブームの最大の受益企業の1社とされる。Forbesの長者番付ではフアンCEOが7位に入り、資産は2023年の210億ドルから、2026年には1920億ドル超へと拡大した。
AI産業の成長が加速するほど、NVIDIAの恩恵も大きくなる構図だ。このため、AI危険論の拡大や世論の不安、中国向け半導体販売を巡る懸念、追加規制の可能性はいずれも同社の成長を左右し得る要因となる。フアンCEOが制御不能なAIや中国向けチップ販売への懸念を矮小化し、規制に強く反対する背景には、こうした利害関係があるとの見方も出ている。
今回の発言は、AI業界内の対立軸を改めて浮き彫りにした。安全性や制御の確保を理由に開発速度の調整や規制整備を求める立場がある一方、危険論は誇張されており、産業発展を妨げるべきではないとする立場もある。フアンCEOは今回のインタビューで、後者の立場を鮮明にした。
とりわけ、AI市場を支える中核半導体企業トップの発言だけに波紋は小さくない。AI需要拡大の直接的な受益者であるNVIDIAが規制や減速論への反対姿勢を維持すれば、今後のAI政策を巡る議論でも、産業成長と安全性確保の間の緊張が一段と強まる可能性がある。