OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、AIの影響力拡大に伴って社会の不安が高まるのは当然だとした上で、業界として悪用を防ぐための安全策や責任ある運用体制を整える必要があるとの考えを示した。
TechRadarによると、アルトマン氏は15日(現地時間)、年次イベント「Dreamforce 2026」でSalesforceのマーク・ベニオフCEOと対談し、AI業界を巡る足元の論争や規制論について見解を語った。
アルトマン氏は、AIリスクへの関心が強まっている背景として、モデル性能の向上に加え、セキュリティ事故の発生を挙げた。Hugging Faceへのハッキングについては「恐ろしい出来事だった」とし、AIがどのように悪用され得るのかを、社会がこれまで以上に具体的に意識するようになったと述べた。
その上で、企業は自社のモデルを悪意ある目的に使わせないという原則を徹底すべきであり、そこに例外があってはならないと強調した。
特に懸念を示したのが、一部のAI企業への権力集中だ。少数の企業が過度に大きな力を持ち、経済全体にまで影響を及ぼしかねないとの不安について、アルトマン氏は「世界がそれを恐れるのは当然だ」と語った。
一方で、AIの将来を悲観一色で見ているわけではないとも説明した。OpenAIは実用主義と一貫性を重視しながら難しいバランスを取っているとし、技術の重要性が増すほど、それを適切に扱う責任も重くなると指摘した。
アルトマン氏は「我々はこれを正しくやり遂げる。その能力があると確信している」と述べ、OpenAIとしても自らの責任の重さを認識していると付け加えた。
また、技術が進歩しても社会の中心はあくまで人間であり続けるとの見方も示した。人は機械の振る舞い以上に、他者に強い関心を向けるためだと説明した。
ただ、技術の恩恵を十分に引き出すには、個人と社会の双方が素早く適応力を高める必要があるとし、それは十分に達成可能な課題だとの認識を示した。
セキュリティ分野では、AIは脅威である一方、防御の手段にもなり得ると述べた。Hugging Faceへのハッキングのような事例はAIの危険性を示す半面、同じ技術を攻撃への対処にも活用すべきだとした。
さらに、疾病治療や創造性の拡大、起業家精神の促進といった恩恵を社会が享受するためにも、AIを活用した防御の強化が必要だと強調した。
OpenAIの長期目標や製品開発の方向性にも言及した。同社は汎用人工知能(AGI)の実現という大きな使命を掲げて出発したが、優れた製品づくりはまだ始まったばかりだと述べた。
その上で、2030年に向けて一段の技術進歩が続くとの見通しを示した。コンピューターが対話を通じてユーザーの意図を理解し、企業の状況まで踏まえて行動するようになる変化に、とりわけ注目しているという。
アルトマン氏は、こうした動きを自身が経験してきた中でも最も大きな技術変化の一つだと位置付け、働き方やコンピューターとの向き合い方を大きく変えるとの見方を示した。
今回の発言は、AI活用の可能性への期待と、安全性や権力集中への警戒感の双方を改めて示した形だ。悪用リスクを抑えながら技術の恩恵をどう広げるかが、今後の焦点となる。