ステーブルコインのイメージ写真=Shutterstock

イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)委員を務めるキャロリン・ウィルキンス氏は15日、ドル建てステーブルコインの拡大が、米ドルの国際的な優位性と米国債需要を同時に押し上げる可能性があるとの見方を示した。一方で、大量の償還が発生した場合には、発行体による米短期国債の売却が市場変動を増幅しかねないと警告した。Cointelegraphが報じた。

ウィルキンス氏はクイーンズ大学ベルファストでの講演で、ステーブルコイン市場の拡大は暗号資産市場にとどまらず、国際通貨秩序や国債市場にも影響を及ぼし得ると述べた。

同氏は、ドル建てステーブルコインが国境をまたぐ決済を容易にし、米国外でもドル連動資産へのアクセスを広げると指摘した。その結果、準備資産として保有される米国債の需要拡大にもつながる可能性があるとした。

また、ドル建てステーブルコインはステーブルコイン市場全体の98%を占めており、ドルに大きな先行者利益をもたらしているとも説明した。

大手発行体はすでに、米国債市場で存在感を強めている。ウィルキンス氏が引用した資料によると、TetherのUSDtとCircleのUSDCは2025年末時点で、米短期国債を約1500億ドル保有していた。2025年通年では、約330億ドルを買い入れたという。

その一方で、償還が短期間に集中すれば、発行体は保有する米短期国債の売却を迫られる可能性がある。同氏は、こうした売りが市場変動の大きい局面でボラティリティを一段と高める恐れがあると警鐘を鳴らした。

ステーブルコイン市場の拡大も続いている。流通残高は3000億ドルを超え、このうち98%がドル建てという。

ウィルキンス氏は、こうした集中がドルの影響力をさらに強める要因になっているとみている。ステーブルコインが事実上の「デジタルドル」インフラとして機能し、国際決済と準備資産需要の双方を米国中心に結び付ける構図が強まっているとの認識を示した。

英国の規制当局は今年に入り、制度整備を加速している。英金融行為監督機構(FCA)は、専用の規制サンドボックスを通じてステーブルコイン発行体候補のテストを開始し、6月には英国でのステーブルコイン発行ルールを確定した。

イングランド銀行もデジタル通貨の実証を並行して進めている。最近では、ステーブルコインとデジタルポンドが国境を越える貿易決済で併用可能かどうかを試験した。

こうした動きを踏まえると、イングランド銀行はステーブルコインに対する姿勢を従来より柔軟にしつつあるとみられる。これに先立っては、同行が提案した規制がイノベーションを阻害しかねないとの批判も業界から出ていた。

今回の発言は、ステーブルコインを決済インフラであると同時に、米国債需要を支える新たな主体とみる見方が広がるなかで示されたものだ。同時に、準備資産の構成や償還ショックが伝統的な金融市場に波及し得ることも改めて浮き彫りになった。

今後は、ドル建てステーブルコインの拡大ペースに加え、各国の規制当局が通貨主権と市場安定の間でどのような制度設計を選ぶかが焦点となりそうだ。

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