写真=ウィキメディア

米実業家のマーク・キューバン氏が、AIそのものよりも、SNS上で拡散される情報に人々が反応し行動に移す構造の方が大きな脅威になり得るとの見方を示した。反AI感情をプラットフォームのアルゴリズムが増幅しかねない点にも懸念を示している。

米メディアBusiness Insiderが15日(現地時間)に報じた。キューバン氏はX(旧Twitter)への投稿で、SNS上の情報に触れた人々が動かされることは、複数のAIエージェントが群れのように連携して動作する「エージェントスウォーム」よりも、はるかに危険になり得ると指摘した。

別の投稿では、AIの現実的なリスクそのものより、人間がそれにどう反応するかをより懸念していると強調した。あわせて、AI開発そのものを止めるのは不可能だとの考えも示した。

こうした発言の背景には、一部研究者の間で「AIが最終的に人類を排除する可能性がある」との懸念が改めて取り沙汰されていることがある。OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)やAnthropicのダリオ・アモデイCEOが、リスク管理の観点から開発ペースの調整支持を表明する中、キューバン氏は技術そのものの破局論よりも、恐怖が広がるメカニズムに目を向けた格好だ。

キューバン氏はとりわけ、SNSのアルゴリズムが反AI感情を過度にあおっていると問題視した。MetaやAlphabetのように、SNSプラットフォームとAIモデルの双方を抱える企業が、自社のAI事業を支えながら、プラットフォーム上ではAIへの反感を強めるという矛盾を抱えかねないという。

同氏は別の逆説として、OpenAIやAnthropicも挙げた。最先端のAIモデルを持ちながらも、SNSアルゴリズムをリバースエンジニアリングして自社に有利なコンテンツを広く拡散させるほどの力は持っていない、と指摘している。

AIの性能競争とは別に、世論形成の局面では、プラットフォーム側の流通構造の方がより強い影響力を持つ――。キューバン氏の問題意識は、そうした点に向けられている。

同氏はこれまでも、AIの限界と産業構造上のリスクをあわせて指摘してきた。現在のAIモデルについては、出力結果に含まれる意味の理解や、状況に応じた文脈把握では人間に及ばないとの見方を示している。

AI開発の減速を巡る議論は、投資家の間でも続いている。映画「ビッグ・ショート」で知られる投資家マイケル・バーリ氏は、性能が向上したAIチャットボットについて「恐れる必要はない」とし、開発ペース調整を求める声を「自らの利益のためだ」と批判した。

キューバン氏の今回の発言は、AIリスクを巡る議論の焦点を、技術そのものから情報流通の構造と社会的反応へ移すものといえる。開発速度を巡る賛否とは別に、プラットフォームのアルゴリズムがAIを巡る言説をどう増幅するのかが、新たな論点になりそうだ。

キューバン氏はXで、「SNSのアルゴリズムが、肯定的なAI感情をはるかに上回る勢いで反AI感情を増幅するという皮肉を見るのは興味深い。MetaとGoogleは、人々がAIを嫌うよう促すことで十分に収益を上げ、その資金で自社のAIを下支えしようとするだろう」と投稿した。

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