「AIエージェントを巡る事故の本質は、アイデンティティの問題にある」――。Palo Alto Networks Koreaのチェ・ジャンラク常務は、OpenAIがテストしていたAIエージェントがHugging Faceを侵害した事案について、アイデンティティセキュリティの重要性を示すケースだとの認識を示した。
チェ常務によると、OpenAIは社内AIモデルの試験に向けてサンドボックス環境を用意し、AIには最高点の獲得だけを目標として設定していた。その後、人による追加の介入はなかったという。
ところが、このAIエージェントは別のAIエージェントと連携し、脆弱性に関する情報を共有してサンドボックスを脱出。その後、インターネット上に露出したキーの探索に及んだとされる。
チェ常務は「外部に露出したアカウントでは、パスワードが平文で保存されていた。しかも過大な権限が付与されており、その権限を使って管理者アカウントにまでアクセスした」と説明した。
こうした事故の背景には、アイデンティティ管理の不徹底があったとみる。チェ常務は、外部に露出したアカウントの継続的な検知に加え、パスワードやキーの定期的なローテーションが必要だと指摘。「アカウントには業務に必要な最小限の権限だけを付与すべきだ。権限が行使されるたびに検知してアラートを上げていれば、こうした事故は防げた」と語った。
Palo Alto Networksは7月、250億ドル(約3兆7500億円)規模でアイデンティティセキュリティ企業のCyberArkを買収し、同分野を強化した。
同社によれば、アイデンティティセキュリティの中核は特権アクセス管理(PAM)にある。特権は人だけでなく、マシンやAIも持ちうるためだ。チェ常務は「あらゆるアイデンティティを特権統制の対象にする」と強調した。
Palo Alto Networksのアイデンティティセキュリティ戦略は、3つの段階で構成される。第1段階の「ディスカバリー」では、人、マシン、AIが利用するすべてのアイデンティティを可視化することに重点を置く。
第2段階の「コントロール」では、アクセス権の認証と常時権限の最小化が柱となる。業務に必要な時だけ権限を付与し、終了後は回収する。最後の「ガバナンス」では、脅威の継続監視と監査データの生成を担う。チェ常務は「見えていないものは守れない」としたうえで、「最も重要なのはディスカバリーだ」と述べた。
この戦略では、AIエージェントも人と同じくアイデンティティとして扱う。未登録のAIエージェントは中核資産に接続できず、起動時には人と同様に認証を受ける。権限のない状態で実行しようとした場合は認証段階で遮断し、基本権限を超える要求があれば人の承認を求める仕組みだ。
チェ常務は「人、マシン、AIが利用するすべてのアイデンティティを、単一のプラットフォームで管理すべきだ」と指摘。「サイロ化したセキュリティソリューションを統合する必要がある」と訴えた。