写真=国際決済銀行(BIS)

国際決済銀行(BIS)は、暗号資産のオンチェーン指標について、集計方法によって実態とのずれが大きくなり得るとする研究結果を公表した。ビットコインの移転額は推計手法によって最大6倍の差が生じる可能性があり、時価総額やステーブルコインの利用実態についても、単純な数値だけでは経済活動を正確に捉えにくいと指摘している。

Cointelegraphが15日(現地時間)に報じたところによると、BISの研究チームはビットコイン、イーサリアム、トロンのブロックチェーン上の記録100億件を分析した。その結果、市場で広く参照されている暗号資産関連の指標が、実際の経済活動をそのまま反映していない可能性があると結論づけた。

ビットコインでは、送金時の取引構造が推計値を押し上げる要因になる。ビットコインの取引では、残額が送信者側に「おつり」として戻るケースが多い。この残額もブロックチェーン上では別の出力として記録されるため、実際には他者に移っていない資金まで移転額に重複計上される可能性がある。

時価総額の算出方法でも大きな差が確認された。一般的な時価総額は、各コインの流通量全体に現在価格を一律に当てはめて計算する。一方、各コインが最後に移動した時点の価格を基準にする「実現時価総額」と比べると、一般的な時価総額は場合によって4倍高くなるという。

こうした測定上の課題はビットコインに限らない。イーサリアムではスマートコントラクトが広く普及しており、オンチェーン活動を明確に分類すること自体が難しいとBISはみている。

研究チームが確認した稼働中のスマートコントラクト約6750万件のうち、約5400万件は今回の分類体系では判別できなかった。オンチェーンデータの量が多くても、その意味を一貫して解釈するのは容易ではないことを示している。

ステーブルコインについても、ブロックチェーンごとに用途が異なるため、単純合算すると実態を見誤る可能性がある。USDTはイーサリアム上では分散型金融(DeFi)との結び付きが強い一方、トロン上では決済や価値保存の手段として使われる傾向がより強かった。

スマートコントラクトによる保有比率にも大きな差がある。イーサリアムでは、スマートコントラクトが保有するUSDTの比率が2022年に20%を超えたが、トロンでは約1%にとどまった。

BISは、同じUSDTでもネットワークごとに経済活動の性格が異なる以上、一括して集計すると実際の使われ方が見えにくくなると指摘した。オンチェーン指標は経済活動の直接的な測定値ではなく、あくまで近似値として扱うべきだとしている。

市場ではすでに、オンチェーン活動の総量と補正後の指標を分けて示す動きも出ている。Visaのオンチェーン分析ダッシュボードは、Allium Labsのデータを基に、ステーブルコインの総取引量と調整後取引量を併記している。

Visaは、高頻度取引やボット、ブリッジ経路、取引所の内部処理といった数値をゆがめる要因を除くことが、調整の目的だと説明した。

実際、Visaのダッシュボードによると、直近30日間のステーブルコイン総取引量は6兆4000億ドルだったのに対し、調整後取引量は3131億ドルにとどまった。

BISの今回の研究は、オンチェーンデータでは取引量そのものだけでなく、どのような基準で算出された数値なのか、取引がどのような性格を持つのかまで合わせて確認する必要があることを示している。投資家や政策当局が判断材料として用いる際も、ネットワークごとの特性と集計手法の限界を踏まえることが欠かせない。

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