自動運転の本格普及を控え、自動車メーカー、モビリティプラットフォーム、ソフト開発企業の競争が強まっている。車両プラットフォームやAIモデルの共通化が進み、技術そのものだけでは差を打ち出しにくくなってきたためだ。今後は、どの企業がより多くの実走行データを蓄積し、学習と検証の高度化につなげられるかが競争力を左右するとの見方が広がっている。
現時点で最も広範な道路データを確保し得る立場にあるのはHyundai Motor Groupだ。約190カ国で年間700万台超を販売しており、車両そのものをデータ収集基盤として活用できる余地が大きい。ただ、本格的なデータ活用は自動運転機能を搭載した量産車の投入後になる。Hana Securitiesによると、現在はデータ収集専用車約40台を使い、難易度の高い走行環境のデータを集める段階にある。
Hyundai Motor Groupは、NVIDIAのチップと開発プラットフォームを活用して開発を加速させる一方、独自の走行モデル「アトリアAI」の育成も進める「2トラック戦略」を採っている。外部プラットフォームを活用しつつ自社モデルを組み合わせ、グループ各社で分散していたセンサー体系も統一することで、データを同一基準で蓄積する構想だ。
一方、車両を持たない企業は、自前で走行データを蓄積する仕組みを構築しなければならない。この分野ではモビリティプラットフォーム陣営の動きが速い。Kakao Mobilityが配車アプリにとどまらず、高精度地図、シミュレーター、管制システムまで自社で整備し、ソウル・江南エリアで深夜運行に乗り出したのもそのためだ。同社は走行状況を、信号や交通ルールへの対応が中心の第1段階から、予測困難なリスクへの対応が求められる第5段階までに分類している。
なかでも、予測が難しい状況のデータを重点的に確保しているという。こうした事象は道路上で発生頻度が低く、記録も限られるため、データを押さえること自体が競争力になる。例えば、未明の違法Uターン、中央線をまたがざるを得ない工事区間、幹線道路に飛び出す酔客といったケースだ。Kakao Mobility自動運転開発チームのAI走行パートリーダー、イム・インホ氏は「膨大なデータの中から難しいデータを効率よく選別できるかどうかが、最近のAI競争の核心だ」と語った。
商用化の現場でも走行データの蓄積は進んでいる。RideFluxは、国土交通部から運転席に安全要員を乗せない条件で臨時運行許可を取得し、ソウル・上岩で3300時間超の走行実績を積み上げた。さらに7月からはHanjinと共同で、群山―全州―大田区間で大型トラックによる貨物の有償輸送を始めている。ソフトを納入するだけでなく、自ら車両を運行してデータを生み出す体制を構築している形だ。
加えて、Tata Daewoo Mobilityの大型トラック「マクセン」「クーセン」に、レベル2+の運転支援ソフトウェアを搭載する量産供給も進めている。車線維持に加え、車線変更、分岐・合流、追い越し、料金所通過まで車両挙動を統合制御する機能を備える。自社保有車両だけでなく、市販車から得られる走行記録もレベル4の検証に活用する狙いがある。
海外でも同様にデータ獲得競争は加速している。NVIDIAが自動運転向け「ハイペリオン」ソリューションを投入したことで、開発スピードはさらに上がった。ハイペリオンは、センサー、中央コンピューティング、安全体系を一体化したプラットフォームで、自動運転車を開発する企業がセンサー構成から個別に設計する負担を減らす効果がある。
その後、BYD、Geely、Isuzu、Nissanが同プラットフォームを採用するレベル4プログラムに参画した。Uberとは、2027年上半期に米国でサービスを開始し、2028年までに28市場でロボタクシーを運行する計画も打ち出している。Hyundai Motor GroupもNVIDIAのソリューションを活用し、2028年にハイペリオン基盤の自動運転技術を量産車へ先行適用したうえで、2029年下半期には自社開発の「アトリアAI」基盤技術へ拡大する方針だ。
各社が蓄積するデータの性質が異なるため、成果が表れる時期にも差が出る。Kakao Mobilityは年内に、認知と判断を1つのE2Eモデルに統合する計画だ。センサーが取得した情報をAIが一括で受け取り、そのまま運転操作として出力する方式で、誤認識による急減速などの挙動を減らせるとしている。
RideFluxは、年内に上岩で運転席無人のロボタクシーを公開サービスとして運行し、2027年までに完全無人化へ移行する計画を掲げる。一方、Hyundai Motor Groupの時間軸は比較的長い。2028年上半期にNVIDIA基盤のレベル2+を量産車へ搭載し、独自のアトリアAI基盤によるレベル2++は2029年下半期を見込む。
Hyundai Motor Groupにとって最初の節目となるのは、2026年末に光州へ投入するアトリアAI搭載の実証車両だ。RideFluxも同じく光州の自動運転実証都市事業に参加しており、1つの実証都市を2陣営が共有する構図となる。Hana Securitiesは、目標達成の可否を判断するうえで必要な技術水準や製品完成度、開発速度の検証は、試作車や量産車が実際に出た後に可能になると分析している。