大陸間の国際データ通信を支える海底ケーブルのイメージ。写真=Shutterstock

国際データ通信の大半は、いまも海底ケーブルが支えている。衛星通信の存在感が高まる一方で、国際電気通信連合(ITU)によると、世界の国際データフローの99%超は海底ケーブル経由だ。AIやクラウドの普及で越境データ通信が増えるなか、海底ネットワークの重要性は一段と高まっている。

世界の海底には、大陸間を結ぶ巨大な通信インフラが張り巡らされている。運用中の海底ケーブルシステムは500超、総延長は約140万kmに達する。各地で発生するデータを大量かつ継続的に運べることが、海底ケーブルの最大の強みだ。

AI向けデータセンターの新設やクラウド利用の拡大も、この需要を押し上げている。サーバーや計算資源が複数の国・地域に分散することで、データのやり取りはより高頻度かつ大容量になっているためだ。

◆長距離伝送を支えるのは光ファイバー

海底ケーブルの中核は、中心部に収められた光ファイバーだ。光ファイバーはガラスやプラスチックでできた細い繊維で、データを電気信号ではなく光信号として伝送する。

利用者が海外のサーバーにデータを送る場合、通信機器がデジタル信号をレーザー光に変換し、光ファイバーへ流し込む。受信側では、その光信号を再びデジタルデータに戻して処理する。

光ファイバー自体は髪の毛ほどの細さだが、実際の海底ケーブルはその周囲を金属管、絶縁材、防水層などで何重にも保護している。沿岸部のように船のいかりや漁業機器と接触するリスクが高い場所では、鋼線などを追加して耐久性を高める。

伝送容量を増やす技術としては、波長分割多重(WDM)が使われる。異なる波長の光にそれぞれ別のデータを載せ、1本の光ファイバーで同時に複数の信号を送る仕組みだ。近年は、1本のケーブルに収容する光ファイバー対の数そのものを増やし、総容量を拡大する手法も広がっている。

ただし、光信号も距離が延びるほど減衰する。韓国と米国を結ぶような1万km級の海底ケーブルでは、送信した光信号をそのまま終端まで維持するのは難しい。

そこで使われるのが光中継器だ。海底ケーブルに沿って一定間隔で設置され、弱くなった光信号を増幅しながら次の区間へ送る。こうして中継を繰り返すことで、データは長距離を伝送できる。

光中継器は独立した発電設備で動くわけではない。海底ケーブルにはデータ通信用の光ファイバーに加え、給電用の導体も組み込まれており、陸上から送られる電力で数千km先の中継器を動かす仕組みになっている。

◆海底網と陸上網をつなぐ陸揚げ局

海底ケーブルを通ってきたデータは、そのままスマートフォンやPCに届くわけではない。海底ケーブルと陸上の通信網をつなぐ「陸揚げ局(Cable Landing Station)」を経由して、国内のバックボーン網へ接続される。

陸揚げ局は、海中の通信網と陸上ネットワークを結ぶゲートウェイだ。海外から到着した光信号を受けて通信事業者の国内基幹網へ送り、逆に国内で発生したデータを海底ケーブルに載せて海外へ流す役割を担う。

例えば、国内の利用者が米国のデータセンター上で動くAIサービスに質問を送る場合、データはモバイル通信網や固定インターネット網を通って国内バックボーンに到達し、その後、陸揚げ局から海底ケーブル経由で米国側の陸揚げ局へ渡る。利用者からは数秒で完了したように見えても、実際には国内網、陸揚げ局、数千kmの海底ケーブル、海外網を順に通過している。

◆敷設と保守は高度な海洋インフラ事業

海底ケーブルの敷設では、事前の海洋調査が欠かせない。海底地形や水深、地質に加え、地震リスク、漁業活動、船舶の航行量などを分析し、最適なルートを決める。

その後、数千km分のケーブルを積んだ専用敷設船が計画ルートに沿って航行し、ケーブルを海中に敷設する。水深の深い外洋では海底にそのまま敷くことが多いが、沿岸部では断線リスクを避けるため海底下に埋設する場合もある。

障害が起きた場合は、専用の修理船が現場に向かう。通信機器で障害位置を推定し、修理船が損傷したケーブルを海面まで引き上げ、破損部分を切除して新しいケーブルを接続する。補修後は光信号が正常に伝送されるかを確認したうえで、再び海中へ戻す。

ただ、障害地点が水深数千mに及ぶケースや天候不順時には作業の難度が大きく上がる。修理船の移動に時間を要するうえ、各国の海域で作業するには許認可手続きも必要になる。

このため、海底ケーブル事業では迂回ルートの確保が重要になる。異なる経路の海底ネットワークを持つほど、特定ルートの障害が全体の通信品質に及ぼす影響を抑えやすい。

◆AIデータセンター拡大で投資も加速

韓国でも、国際データトラフィックの増加を受けて海底ケーブルへの投資が続いている。代表例がSK Broadbandだ。

同社は2025年7月、韓国、日本、シンガポール、香港などアジア7カ国・10地域を結ぶ全長1万500kmの「Southeast Asia-Japan Cable 2(SJC2)」の商用サービスを開始した。韓国ではSK Broadbandが単独で参加した。

伝送容量は毎秒9テラビット。同社によると、1秒間にフルHD映画281本をダウンロードできる水準という。

さらに同社は、太平洋横断の海底網整備にも乗り出している。2025年3月には、韓国、米国、日本、台湾を結ぶ「E2A」海底ケーブルの構築コンソーシアムに参画した。

総延長約1万2500kmのE2Aは、韓国・釜山、日本・千葉県丸山、台湾・宜蘭県頭城、米国・カリフォルニア州モロベイなど、アジアと米国の主要デジタル拠点を接続する計画だ。

海底ケーブルへの注目が高まる背景には、AIデータセンターの拡大がある。AIモデルの学習や推論を担うサーバーが各地のデータセンターに分散配置され、大容量の国際ネットワーク需要が増している。

各国でデータセンターが増えても、それらを結ぶ国際回線が不足すれば、データの円滑な送受信は難しい。AIサービスでは、大規模な学習データやモデルを地域間のデータセンターで移動させたり、利用者の要求を海外の計算資源に振り向けたりする場面が多く、計算性能だけでなくネットワークの容量と安定性が競争力を左右する。

衛星通信は広域を素早くカバーできる利点がある。一方、海底ケーブルは大容量データを安定的に流し続ける用途で強みを持つ。通信事業者にとっては、データセンター、クラウド、法人向け専用線を支える基盤インフラといえる。

もっとも、海底ケーブルへの依存が高まるほど、安定運用の確保は大きな課題になる。障害時に迅速に対応できる修理船や専門人材の確保、国境をまたぐ復旧手続きの円滑化も欠かせない。

伝送容量の拡大に加え、どれだけ多様なルートを持てるかも海底ネットワークの競争力を測る重要な指標になっている。日常生活で目にする機会は少ないが、AIとクラウドの時代を支える国際通信の大動脈は、いまも水深数千mの海底に敷かれた光ファイバーなのである。

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