Skild AIのディープラク・パタクCEO(写真:同氏のXアカウントより)

Skild AIが、ロボット向け基盤モデルの商用化から10カ月で年換算売上高(ARR)1億ドル(約150億円)を突破した。ディープラク・パタクCEOがX(旧Twitter)への投稿で明らかにし、実運用を軸にした事業拡大の状況と同社の開発方針を説明した。

パタク氏によると、同社はこの10カ月で、物流搬送、配送、点検、警備、調理のほか、倉庫・工場・データセンターの運用分野で有料顧客60社以上を獲得した。売上の約10%はモビリティ分野が占めるという。

具体的な導入事例としては、NVIDIAおよびFoxconnと連携し、デュアルアームロボットに同社の基盤モデル「Skild Brain」を適用し、NVIDIA Blackwellシステムの精密組み立て工程に投入している。

また、Sumitomo Wiring Systemsとは、従来は自動化が難しいとされてきたワイヤーハーネス製造工程の自動化を進めている。Mitsui & Co.とは、1日140万食規模の給食サプライチェーンを対象に、最新モデル「S1」を搭載した汎用ロボットのパイロット導入を進めている。

パタク氏は、ロボットAIでは実際の現場への配備が技術の本質だと強調した。「私たちは当初から、配備を技術開発の最終成果ではなく、その中核そのものと捉えてきた」としている。

その上で、ロボティクス分野には「超高性能なモデルと優れたハードウェアがあれば、ある日突然ロボットがあらゆる場所に広がる」との見方があるものの、現実はそうではないと指摘した。

同氏は「ロボティクスでは現場配備を先送りできない。サプライチェーンをどう組むのか、誰が設置するのか、統合は誰が担うのか、故障時に誰が修理するのか、工程変更時に誰が更新するのか。こうした問いへの答えは、実際に現場に入って初めて見えてくる」と述べた。

デモ動画だけでは実力を測れないとも強調した。「精度が5%でも99%でも、切り取られた成功シーン1つだけを見れば同じに見える。昨年、卵料理を学習させた際には、最初の1つを完成させるまでに1週間かかり、さまざまな卵や環境でも安定して動作するようにするまで、さらに2カ月を要した」と説明している。

さらに「最後の5%の性能を引き上げるための労力は、最初の95%を実現するよりはるかに大きい」とも述べた。

速度面も実運用では重要だという。「精度が99.9%でも、速度が10倍遅ければ現場投入は難しい。10工程のラインで半分をロボットが担う場合でも、1カ所が遅ければライン全体の処理速度がそのロボットに引きずられる」とした。

加えて、「サプライヤーが部品を変更したり、工場が作業台を再配置したりと、現場の変化は絶えない。そのたびに新たなデータを集めて再学習しなければならないなら、運用は成り立たない」と指摘した。

こうした課題認識を踏まえて開発したのが、NVIDIAのAIインフラを基盤とする最新モデル「S1」だという。S1は、作業者の手本となる動作動画を与えるだけで、モデルを再学習させることなく新たな作業を即座に実行できるとしている。

パタク氏は、デモ中心の文化と実配備重視の文化は、同じ企業の中では両立しにくいとも語った。

「精度50%のロボットでも、うまく撮れた場面を1つ選ぶことはできる。だが、実配備では残りの50%を埋め切らなければならず、その方がはるかに難しい。私たちは実配備を成果として評価することにした」と述べた。

あわせて、配備データを活用して性能を反復的に高める「Physical Recursive Self-Improvement(Physical RSI)」の考え方も紹介した。複数のロボットや作業で学習した基盤モデルを各現場に配備し、in-context learningで新しい作業に適応させ、その過程で蓄積したデータを基盤モデルに戻すことで、次の配備をより高い完成度から始められるという。

パタク氏は「デモの時代は終わった。配備の時代が始まった」と強調した。

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