SAPのクリスティアン・クラインCEOは、企業の複雑な業務プロセスを自動化するAIエージェントの開発に注力していると明らかにした。単純な用途ではなく、ERP領域の難易度が高い業務課題に絞って展開する方針で、エージェントの管理もSAPが一元的に担う考えを示した。
Constellation Researchが10日(現地時間)に伝えたところによると、クラインCEOはゴールドマン・サックスの投資カンファレンスで、「以前は経営層の会話の多くがクラウド移行に集中していたが、いまはAIが中心テーマになっている」と述べた。そのうえで、「企業は業務プロセスの自動化と、AIエージェントを管理しやすい仕組みを求めている」と語った。
クラインCEOは、「SAP ERPは世界でも最も複雑な業務プロセスを扱っている」と説明。「どの大規模言語モデル(LLM)でも簡単に処理できるような課題ではなく、顧客の複雑な課題を解決するエージェントだけを提供する」と強調した。
AIエージェントでは精度も重視する。クラインCEOは「データ、オントロジー、ビジネスデータクラウドが極めて重要だ」と指摘し、「Palantirでもセマンティックレイヤーは構築できるが、SAPの方が標準で提供する範囲は広い」と述べた。
SAPはあわせて、SnowflakeとDatabricksとの協業を通じて外部データも扱えるようにする計画だ。
一方で、AIエージェントの導入に伴う管理や規制対応の複雑さにも言及した。クラインCEOは、「多くの顧客は、簡単なAIユースケースであっても、ID管理や権限付与、エージェントの閲覧・更新・書き込み権限に加え、米国のFedRAMPやドイツの厳格な規制要件のようなコンプライアンス対応を問いかけてくる」と説明した。
こうした要件については、SAP ERPの環境ではすでに対応できているとする一方、顧客がエージェントを独自に運用する場合には、改めて解決すべき課題になるとの見方を示した。
そのうえでクラインCEOは、「SAP、パートナー、顧客のいずれが開発したものであっても、すべてのエージェントをSAPが直接管理する」と述べた。あわせて、「SAP Joule Studioは特定のモデルに縛られず、価格と性能のバランスが最も優れたモデルを選択する」と説明した。
また、こうしたAI活用の前提として、クラウド移行とS/4HANAへの移行が必要になるとの認識も示した。クラインCEOは「オンプレミス基盤の顧客の60%は、まだクラウドに移行していない。やるべきことは多い」と述べた。