米銀行業界で、AIに用いるデータの品質や責任の所在を一覧で把握する「データ栄養成分表」の活用に向けた動きが進んでいる。誤ったデータや古い情報がAIの誤作動を招くリスクを抑えるのが狙いだ。
American Bankerが8日付で報じたところによると、金融サービスセクター調整協議会(FSSCC)の作業部会は、AI向けデータを評価する「データ栄養成分表(DNL)」の枠組みを策定した。すでに一部の銀行では実務への適用が始まっているという。
DNLでは、データの出所、品質、最新性、完全性、偏り、更新頻度などを明示し、AI利用の適否判断に役立てる。AIに入力するデータの状態を事前に点検しやすくする仕組みといえる。
FSSCCは、評価体系として「基本型」と「高度型」の2段階を提案した。基本型では、データが最低限の品質要件を満たしているかを確認する。高度型では、データ収集や前処理、サンプル構成、維持管理など、AI活用に必要な要素をより詳細に評価する。
求められる水準は用途によって異なる。マーケティング文言の生成よりも、与信や融資審査のように金融リスクが直接伴う業務では、より高いデータ品質が必要になる。
PNCグループは、従来のモデルリスク管理と生成AIのリスクを分けて運用している。ネド・キャロル(Ned Carroll)PNCデータ・自動化責任者は、「AIは確率的に回答を生成するため、従来の決定論的なモデルと同じ方法で管理するのは難しい」としたうえで、「その分、体系的なデータ管理が重要になる」と説明した。
責任の所在も重要な論点だ。データの保有部門は、正確性と適時性を確認する責任を負う。信用評価会社や市場情報会社など外部提供先のデータを使う場合も、品質保証が求められる。
また、銀行各社はChatGPTやClaudeのような汎用モデルをそのまま使うのではなく、社内の方針や手続き、自社データを組み合わせながら、業務の文脈に沿って活用している。
もっとも、DNLは万能ではない。イアン・シュノア(Ian Schnoor)金融モデリング研究所専務は、データの透明性を高める出発点として評価する一方で、「評価方法によっては、解釈や操作の余地が残る可能性がある」と指摘した。
金融業界のAI競争は、単なるモデル性能の優劣にとどまらない。どのデータを、どこまで信頼できる形で管理できるかが、新たな競争軸になりつつある。