UAEでの大型トンネル計画が今回の資金調達を後押ししたとみられる。写真=The Boring Company

イーロン・マスク氏が率いるトンネル掘削企業The Boring Companyが、30億ドルのシリーズD資金調達を実施し、企業価値は230億ドルに達した。評価を押し上げたのはUAEで進む150km超の大型トンネル計画だが、旅客輸送の営業実績はなおラスベガスに限られている。

Electrekが10日(現地時間)に報じた。今回のラウンドは、アラブ首長国連邦(UAE)とその関連投資機関が主導したという。

企業価値は、2022年時点の約57億ドルから約4倍に拡大した。出資にはSequoia Capital、Andreessen Horowitz、Temasek、Valor Equity Partners、Vy Capital、Human Capital、Shamal Holding、Baron Capitalも参加した。

調達資金は、エンジニアリング、運用、生産分野の採用のほか、Loopプロジェクトの拡大やトンネル掘削機「Prufrock」の研究開発に充てる計画だ。マスク氏は資金調達に合わせ、同社の狙いが渋滞緩和にあると改めて強調し、「渋滞に打ち勝つことは究極のボス戦だ」と述べた。

今回の投資判断の中核にあるのは、UAEで進める150km超のトンネル建設計画だ。UAEは投資家であると同時に、同社にとって最大の顧客でもある。The Boring Companyはすでに「Dubai Loop」の実証事業を受注しており、計画は延長6.4kmのトンネルと4駅で構成される。工事は2026年末に始まる予定で、同社によると、案件向けのプレキャスト部材の生産も進んでいるという。ただ、UAEではまだ旅客用トンネルの開通実績はない。

現時点でThe Boring Companyが実際に旅客輸送を手がけているのは、米ラスベガスのみだ。「Vegas Loop」の累計利用者数は400万人を超え、クラーク郡は最近、19駅の追加を承認した。これにより、認可済みネットワークは計123駅規模となる。同社はラスベガスで14本目のトンネル掘削を始めており、全体では25本目に当たる。

一方で、他地域での拡張も進めている。ナッシュビルの「Music City Loop」は2月25日、州政府の許可取得と同日に掘削を開始した。8月にはPrufrock2台が同時稼働に入り、3台目はテキサスで最終組み立て段階に入った。

ただ、今回の高い企業価値は、なお実現していない事業計画への期待に支えられている面も大きい。The Boring Companyは2017年以降、約12都市でプロジェクトを打ち出してきたが、旅客輸送を実際に運営しているのはラスベガスだけだ。

象徴的なのが「Chicago O'Hare Express」だ。2018年の発表時には、市中心部と空港を結ぶ時速150マイル級のポッドシステムを掲げたが、資金調達と正式契約を確保できず、2019年に事実上中断した。「Washington-Baltimore Loop」もメリーランド州の条件付き許可を得たものの、その後は同社の公式サイトから姿を消した。カリフォルニア州オンタリオ空港の接続事業では、事業費が4500万ドル規模から5億ドル近くまで膨らみ、同社は環境審査手続きではなく撤退を選んだ。

サンアントニオでは2022年、空港と都心を結ぶ9マイルのシステムで優先事業者に選ばれたが、現地交通当局はThe Boring Companyが「メールへの返信をやめた」と説明し、2023年に契約は白紙となった。フォートローダーデールのビーチトンネル計画も停滞したままだ。ロサンゼルスでは、セプルベダの試験トンネルやドジャースタジアム向けの「Dugout Loop」が、地域住民の反対や許認可上の問題で頓挫している。

総じてみれば、今回の資金調達は、限られた営業実績よりもUAEでの大型案件を軸とした将来期待を色濃く反映したものといえる。今後の焦点は、UAEで初の旅客用トンネルが実際に開通するかどうか、そしてラスベガス以外でもLoopモデルが需要を証明できるかに移る。

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