暗号資産市場では、ブロックチェーン上に取引記録が残っていても、長年にわたって真相が解明されない事案が少なくない。Bitcoinの創設者サトシ・ナカモトの正体をはじめ、取引所の破綻に伴う資産消失、大規模ハッキング、詐欺事件、保管ミスによる損失など、業界にはいまなお多くの謎が残る。
Cointelegraphは9日、未解決のままとなっている暗号資産市場の主要なミステリー10件を紹介した。
筆頭に挙がるのは、Bitcoin創設者サトシ・ナカモトの正体だ。サトシは2008年にBitcoinのホワイトペーパーを公表し、2009年にジェネシスブロックを採掘した後、2010年には表立った活動をやめた。
その後も複数の人物が候補として取り沙汰されてきたが、決定的な証拠は示されていない。初期の採掘パターンから約110万BTCを保有すると推定される「Patoshi」についても、サトシ本人との関係は確認されていない。
取引所の破綻とともに消えたBitcoinも、代表的な未解決案件の一つだ。Mt. Goxは2014年、約85万BTCが消失したと発表。その後に20万BTCを発見したものの、残る資産の行方を巡ってはなお不明点が残る。
米検察は、ロシア国籍の関係者が約64万7000BTCを盗み、資金洗浄したと主張している。ただ、流出の全容や責任の所在が完全に解明されたわけではない。
カナダの取引所QuadrigaCXも多くの疑念を残した。創業者のジェラルド・コットンが2018年に急死した後、顧客資産にアクセスできなくなったためだ。
調査では、顧客資金が個人口座に移されていた形跡が確認されたが、隠しウォレットの有無を含め、事件の全容は最終的に明らかにならなかった。
「Cryptoqueen」として知られるOneCoin創業者ルジャ・イグナトワの行方も依然として分かっていない。OneCoinを通じ、世界の投資家に40億ドル超の損害を与えた疑いが持たれている。
イグナトワは2017年、ソフィアからアテネへ移動した後に消息を絶った。米連邦捜査局(FBI)は現在も指名手配を続けている。
個人による資産管理の失敗例としては、ジェームズ・ハウエルズのケースが知られる。英国ウェールズのIT関係者であるハウエルズは2013年、8000BTCにアクセスするための鍵が入ったハードディスクを誤って廃棄した。
大規模な埋立地に埋もれた記憶装置を探し出すため発掘計画も示したが、裁判所は2025年1月、復旧の可能性は現実的ではないとして最終判断を下した。ハウエルズのBitcoinはブロックチェーン上に残っている一方、事実上アクセス不能なままだという。
Ethereumでは、2016年のThe DAOハッキングが代表的な事件の一つとされる。攻撃者はスマートコントラクトの脆弱性を突き、360万ETH超を流出させた。この事件は最終的にEthereumとEthereum Classicの分裂につながった。
攻撃者とされた人物は関与を否認しており、公式な処罰も行われていない。
FTXの破綻直後に起きた約4億1500万ドル規模の資産流出も、実行主体は特定されていない。当局は一部資産を差し押さえ、資金の移動経路を追跡したが、外部ハッカーによる犯行だったのか、内部権限が悪用されたのかについて結論は出ていない。
DeFiの初期インフラ構築に関わった一人、ニコライ・ムシェギアンの死も議論を呼んだ。MakerDAOの初期開発者で、Balancerの共同創業者でもあるムシェギアンは、2022年10月28日、プエルトリコのサンフアン・コンダド海岸近くの海で遺体で見つかった。
現地警察は、遊泳中に強い海流に流されたとの見方を示した。一方で本人は死亡の数時間前、SNS上で自分が殺害される可能性があると警告していた。米中央情報局、モサド、そして「小児性愛エリート」が自分を陥れて殺そうとしている、という内容も投稿していたという。プエルトリコ司法省は約1年にわたる調査の末、犯罪との関連は確認できないと結論付けた。
直近では、長期保有されていたBitcoinが意図的にバーンされたとみられる事例も注目を集めた。5月、何者かが約107BTC(当時850万ドル)相当を永久に利用できないアドレスに送金した。
送金の一部が大手カストディ事業者とみられる経路を通っていたことまでは確認されたが、高額のBitcoinを意図的にバーンした理由は分かっていない。
これらの事例は、ブロックチェーンが取引履歴を公開していても、市場のあらゆる疑問を解消できるわけではないことを示している。匿名ウォレット、取引所の破綻、デジタル資産の保管ミス、捜査上の空白が重なれば、資金の流れが見えていても、最終的な実行主体や動機がなお判明しないケースがある。