米国の大手完成車メーカーで、電気自動車(EV)関連の発表が足元で急減している。かつては電動化戦略を前面に打ち出してきたが、直近では発信自体を抑える動きが目立っており、EV戦略の後退を指摘する声も出ている。
EVメディアのCleanTechnicaが10日(現地時間)に報じた。米完成車メーカーは数年前まで、実際のEV販売比率を大きく上回るペースで関連リリースを打ち出し、電動化への投資や将来構想を積極的に訴えていた。だが最近は、EV事業に関する発表や言及が大幅に減っているという。
背景の一つとして挙げられているのが、Teslaの成長だ。TeslaがModel 3の量産を軌道に乗せ、株価も大きく上昇した局面では、既存の完成車メーカーもEVビジョンや投資計画を競うように打ち出した。EVシフトへの期待が高まる中、EV事業を強調することが企業価値の押し上げにつながるとの判断があったとみられる。
ただ、その後は期待通りの成果が伴わなかった。EV事業は株価や販売実績に直結せず、一部プロジェクトが競争力を示したケースはあったものの、市場の反応は限定的で、販売も想定を下回ったという。こうした状況を受け、完成車メーカー各社はEV関連メッセージを絞り始めたとの見方が出ている。
米国の政治環境の変化も重なった。ドナルド・トランプ大統領の再登板後は、EV産業に対する政策面の圧力が強まり、既存メーカーがEVプログラムを縮小したり、関連発言を控えたりする空気が広がったとされる。政権の政策スタンスを意識し、EV分野の成果を積極的に広報しない動きもみられるという。
実際、最近の米自動車業界では、EV関連のプレスリリースは過去に比べて大きく減少した。EVを将来の成長エンジンとして掲げていた時期とは対照的に、足元では発表そのものがまれになっている。EVが話題に上る場合も、投資拡大や新技術ではなく、事業縮小などネガティブな内容に焦点が当たるケースが多いという。
これに対し、中国ではEV関連ニュースが継続的に出ている。中国メーカーは新型車の投入に加え、電池技術や自動運転、生産拡大など幅広い分野で新たな情報発信を続けている。
米中のEV産業を巡っては、企業の対外発信に大きな温度差が出ている格好だ。米完成車メーカーの「EV沈黙」は、単なる広報方針の変化にとどまらず、産業競争力の低下につながりかねないとの懸念もある。かつてEV市場での主導権を強調していた企業が、政治や市場環境を意識して投資を表に出さなくなれば、中国勢との技術・市場格差がさらに広がる可能性があるためだ。
今後の焦点は、米完成車業界がEVを再び中核的な成長戦略として打ち出せるかどうかだ。需要動向や政策環境次第では投資と発信が戻る可能性もあるが、現時点では米自動車メーカーのEV戦略は従来より守勢に回ったとの見方が強い。