暗号資産企業が米国で連邦信託銀行の認可を取得しても、政治的圧力や監督リスクから完全に切り離されるわけではない――。こうした見方が浮上している。受託業務の法的位置付けは明確になるものの、同時に通貨監督庁(OCC)の直接監督を受けることになるためだ。認可が事業の安定につながるのか、それとも監督強化を招くのかが焦点となる。
◆ Silvergate清算を巡る評価は分かれる
ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが9日(現地時間)に報じたところによると、Silvergateの元最高経営責任者(CEO)、アラン・レイン(Alan Lane)氏は、2022年末に預金の約70%が流出した後も、同行は支払能力と流動性を維持し、顧客向けサービスを継続できたと主張した。
同氏は8日に公表した見解で、2023年3月8日の清算発表は政治的・規制上の圧力によるものだったと説明した。Silvergateの事業継続を困難にしたのは、バイデン政権の対応だったとの認識を示している。
一方、連邦準備制度理事会(Fed)の監査官は2023年9月、異なる見方を示した。暗号資産業界に偏った預金構成や急成長、資金調達リスクに加え、ガバナンスとリスク管理に重大な脆弱性があったと指摘した。
Fedは2024年7月、Silvergateが清算と事業整理を終え、顧客預金を全額返済したほか、銀行業務を終了したことを確認した。あわせて、マネーロンダリング防止規制への対応に問題があったとして、4300万ドルの罰金を科した。
SilvergateもFedとサンフランシスコ連邦準備銀行の監督下にあった。ただ、近年、暗号資産企業が志向しているモデルはSilvergateとは異なる。預金を基盤とする銀行ではなく、顧客資産の保管を担う受託業務に軸足を置いた連邦信託銀行だ。
連邦信託銀行の認可は、受託業務に関する明確な法的枠組みを与える半面、OCCの直接監督下に入ることも意味する。現金管理については、引き続き外部銀行に依存する構造が残る可能性がある。
OCCは2025年12月、Ripple(XRP)とCircleが推進した「First National Digital Currency Bank」の信託銀行認可申請を条件付きで承認した。BitGo、Fidelity Digital Assets、Paxosの転換も認めている。
Circleは7月10日、最終承認を取得したと発表した。まずは自社と関連会社の受託業務を担い、準備金管理機能は今後追加する計画だと説明している。
◆ 認可後も続く当局の監督
もっとも、連邦信託銀行の認可を得ても、一般的な預金取扱銀行と同じ権限が与えられるわけではない。Coinbaseが4月2日に得た予備的な条件付き承認も、受託義務に基づくデジタル資産のカストディー業務と関連サービスに対象が限られていた。
この信託銀行は、預金保険の対象となる預金取扱機関ではない。受託業務に関連する法定通貨は、第三者銀行の「顧客利益のための口座」に保管することとされた。受託機能は連邦監督の下に置きつつ、現金面では外部銀行との関係を維持する仕組みだ。
当局による関与も続く。Coinbaseに対するOCCの予備承認は、状況の変化に応じて修正、中断、撤回される可能性がある。さらに、設立段階から営業開始後3年間は、事業計画に重大な変更が生じる場合、事前通知と書面によるnon-objection(異議なし)が必要になる。
OCCは2025年3月7日、暗号資産関連業務に対する一般的な事前のnon-objection手続きを廃止した。ただし、個別の銀行に課される承認条件まで撤廃したわけではない。
監督手法を巡るルールも見直された。OCCと連邦預金保険公社(FDIC)は、評判リスクだけを理由に銀行へ不利益な監督措置を講じることを禁じる規則を整備した。
この規則では、政治的に好ましくないが合法的な事業活動であることを理由に、口座やサービスの停止を求めたり指示したりすることも制限している。
両機関は8月27日、不健全な慣行と「是正要求事項」(MRA)に関する新たな基準も公表した。新基準では、重大な財務リスクと預金保険リスクに監督の重点を置き、財務の健全性と無関係な評判上の懸念は対象から外した。
最終規則は9月1日に公表され、11月2日に施行される。OCCも、監督・制裁手続きをリスクに見合った形へと調整した。
結局のところ、連邦信託銀行の認可は、暗号資産企業に受託業務を担うための明確な法的位置付けを与える一方、OCCとの直接的な監督関係を受け入れることも意味する。受託、コンプライアンス、財務健全性を巡る条件への対応は避けられない。
Silvergateの事例が示すように、銀行としての地位そのものが政治的・規制上のリスクを取り除くわけではない。暗号資産企業にとっての次の課題は、連邦認可の取得にとどまらず、変化する監督基準の下で認可事業を予見可能な形で運営し、外部銀行との関係も安定的に維持できるかにある。