Anthropicが、Metaを専任で担当する営業職の求人を掲載した後、削除していたことが分かった。MetaはAnthropicの主要顧客である一方、自社AIの開発では競合関係にもあり、両社の入り組んだ関係に改めて注目が集まっている。
米Business Insiderが9日(現地時間)に報じたところによると、Anthropicの採用ページには一時、「Meta Account Executive, Meta」と題した求人が掲載されていたが、その後削除された。
求人情報によれば、このポジションはデジタルネイティブ企業などの戦略アカウントを対象に、新規案件の獲得と売上拡大を担う営業職。年俸レンジは38万〜45万ドル(約5700万〜6750万円)としていた。本文では特定企業名に触れていないものの、職種名にはMetaが明記されていた。
単一顧客を職種名に掲げた営業職の募集は異例といえる。Anthropicの他の営業職求人は、地域別や業界別の担当を想定したものが中心で、今回のように大口顧客を名指ししたケースは目立つ。
AnthropicはBusiness Insiderの取材後、この求人を削除した。今回の求人について、AnthropicとMetaはいずれもコメントしていない。
両社の関係は、顧客と競合の側面が重なる点に特徴がある。MetaはAnthropicのAIサービスを大規模に利用する主要顧客とされる一方、自社のAIモデルや関連製品の開発を進めており、事業面では競争相手でもある。
特にAnthropicのAIコーディングツール「Claude Code」は今年、シリコンバレーで急速に普及し、Meta社内でも利用が広がったと報じられている。一方のMetaは自社AIの強化を進め、外部AIツールへの依存を引き下げる動きも続けている。
MetaによるAnthropicへの支出規模も注目点だ。内部推計の一部では、MetaがAnthropicに年間最大100億ドル(約1兆5000億円)を支出する可能性があるとの見方も出ている。Anthropicにとって、Metaのような超大口顧客からの売上は成長と企業価値に直結する。
このため今回の求人は、単なる営業人員の拡充にとどまらず、AnthropicがMetaとの取引を中長期的に維持・拡大する姿勢を示したものとの見方がある。AnthropicがIPO準備を進める中、安定した大口売上の確保は重要な要素になりそうだ。
もっとも、Metaが自社AIモデルの性能向上によってAnthropicへの依存度を下げれば、両社の関係は変化する可能性がある。Metaは顧客としてAnthropicのサービスを利用しながら、競合として自前のAIエコシステム拡大も進める立場にあるためだ。
AnthropicとMetaの関係は、競争と協業が同時に進む現在のAI業界の構図を映し出している。AnthropicがMetaのような大口顧客をどこまで維持し売上を伸ばせるか、またMetaが外部AIサービスへの依存をどの水準まで下げるかが、今後の関係を左右しそうだ。