(左から)Belugaのキム・ジョンユン代表、チュ・ヘヨン主任研究員、ソウル大学医学部のミン・ギョンボク教授。脳トレゲーム「オヌルトゥホドゥ」を説明した。写真=Kakao Games

認知機能分野のスタートアップBelugaは、脳トレゲーム「オヌルトゥホドゥ」を足掛かりに、デジタル治療領域へ事業を広げる。ゲームのプレイ中に蓄積される行動データを解析して認知状態を推定する技術を開発し、将来的には軽度認知障害向けデジタル治療機器の開発につなげる考えだ。

Belugaのキム・ジョンユン代表は9日、京畿道・板橋のKakao Games本社で取材に応じ、「『オヌルトゥホドゥ』はAIモデル開発に必要なデータを蓄積し、開発した技術を最初に適用する出発点になる」と述べた。

「オヌルトゥホドゥ」は、BelugaがKakao Gamesと共同研究し、先月24日に公開したカジュアル型の脳トレゲームだ。記憶力、注意力、実行機能、言語機能、視空間機能の5領域を複数のミニゲームで鍛える構成で、トレーニング機能に加え、自身の認知状態を確認できる測定機能も備える。

Belugaは創業当初から、軽度認知障害向けデジタル治療機器の開発を目標に掲げてきた。その後、治療段階に入る前に認知機能低下のリスクを早期に見つける支援が必要だと判断し、まずモバイル認知測定サービス「Brain OK」を開発。さらに継続的に認知機能を鍛えられるサービスへと領域を広げ、「オヌルトゥホドゥ」を投入した。

キム代表はこれまで、NaverやWemade、Kakao Gamesでゲームプラットフォームや技術開発を担当してきた。ゲームの楽しさを社会課題の解決に生かしたかったことが、今回の事業につながったという。

同氏は「ゲームは他産業に比べて技術的な挑戦が多く先進的だが、否定的な見方もある」とした上で、「ゲームを通じて“面白さ”以外の価値を提供できれば意義があると考え、機能性ゲームに関心を持つようになった」と話した。

◆プレイ過程をデータ化、認知状態を推定するAIを研究

Belugaが重視するのは、最終的なスコアだけではない。利用者が課題を解く過程で生じる行動データそのものだ。従来の病院での検査は、決められた時間内で実施し、主に最終結果を確認する。一方、デジタルゲームでは、解答速度や反応パターンなど、利用者ごとに異なるプレイの過程をデータとして蓄積できる。

ソウル大学医学部予防医学科のミン・ギョンボク教授は「病院での検査は正確で、長年にわたり検証されてきたが、主に最終結果を見るものだ」と説明する。その上で「検査の過程で表れる個々の行動を測定すれば、数千単位の変数を取得できる。AIとビッグデータ解析を通じて、結果値以上に重要な情報を見いだせる可能性がある」と語った。

Belugaは現在、Kakao Gamesと、認知プロファイリングプラットフォーム「Mind Play」の中核となるAIモデルを共同研究している。ゲームで得たデータを基に利用者の認知状態を推定し、個々の特性に合ったサービス提供へつなげるのが狙いだ。

チュ・ヘヨン主任研究員は「最終的には、既存の検査では得にくいゲームデータを基に、別の認知測定ツールを介さずに認知状態を推定する方法まで検討している」と説明した。

「オヌルトゥホドゥ」のミニゲームは、それぞれで必要とされる認知機能を分析した上で、5つの領域に分類して設計した。チュ主任研究員は、ゲームごとに求められる認知機能をさらに細分化し、利用者がどのコンテンツをどの程度継続利用したときに変化が現れるのかを分析している。

ゲーム形式を採用した理由は、継続利用のしやすさにある。認知訓練は短期間では効果を確認しにくく、反復と継続が重要だが、従来の訓練プログラムは娯楽性に乏しく、利用が続きにくいという課題があった。

ミン教授は「これまでも教員や研究者が直接作った認知訓練プログラムはあったが、試験問題のように感じられ、1回で終わってしまうケースが多かった」と指摘する。「継続して使われるサービスにするには、ゲーム開発の経験と技術的な完成度が必要だ」と話した。

継続利用を促すもう一つの仕組みが、利用のハードルを下げた設計だ。「オヌルトゥホドゥ」は、1日15分程度の基本トレーニングを、追加課金や広告視聴の義務なしで利用できるようにした。一方で、より長く遊べる機能やヒント利用などの有料アイテムは別途用意する。

キム代表は「事業面では必ずしも有利ではないかもしれないが、創業の目的に照らせば、社会的価値の実現と貢献のためにはこの形が望ましいと判断した」と述べた。利用者の参加拡大が認知データの蓄積につながる点で、こうした運営方針はデータ確保の戦略とも重なる。

◆シニア向け版と海外展開を準備、2028年に開発着手へ

Belugaはシニア向けの別バージョンも準備している。現行サービスは60代までを想定して設計したが、70代以上には使いにくい部分があると判断したためだ。画面構成や操作方法、難易度を調整したシニア向け版を投入し、関連データの蓄積を進める。

海外展開も進める。来年上半期に英語版を公開し、その後は対応言語を段階的に広げる計画だ。言語機能は主要な認知領域の一つであるため、既存コンテンツを単純に翻訳するのではなく、英語利用者向けに新たなコンテンツを制作する。

長期的には、軽度認知障害向けデジタル治療機器の開発を進める。シニア向け版の運用でデータを確保し、サービスの完成度を高めた上で、2028年に開発へ着手する方針だ。

もっとも、現時点で公開済みの「オヌルトゥホドゥ」について、認知機能の改善や認知症予防の効果が医学的に検証されているわけではない。Belugaも、測定機能の妥当性と訓練効果は切り分けて捉えているという。

ミン教授は「『オヌルトゥホドゥ』はソフトウェアとしての技術的完成度は高いが、まだ医学的に検証されたものではない」と説明。「現段階ではデータを蓄積し、保健学・医学の面で完成度を高めながら、大規模研究の準備を進めている」と述べた。

既存の「Brain OK」に適用した測定技術については、病院で実施する対面式の認知検査とモバイル測定結果の相関を比較した研究を経て、国際学術誌「Diagnostics」に論文が掲載された。ただしミン教授は、この研究は正式な臨床試験ではなく、独立した外部機関による追加検証が必要だとしている。

「オヌルトゥホドゥ」の訓練効果についても、今後あらためて検証を進める。Belugaは、利用者が一定期間ゲームを利用する前後で認知測定を行い、変化を確認できるようにした。蓄積したデータを基に、来年から効果検証の研究と論文発表を進める計画だ。

キム代表は「まだ論文や臨床を通じて有用性が立証された段階ではなく、効果があると断定することはできない」としつつ、「訓練効果には自信があるため、利用者自身が前後の変化を直接確認できるよう、認知測定機能もあわせて搭載した」と語った。

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