英国でAIデータセンターの増設が進むなか、運営に伴う常設雇用は業界見通しほど伸びない可能性があるとの分析が浮上した。英シンクタンクのVerdantによる試算は、業界団体techUKの推計を大きく下回っており、雇用効果をどう測るかが論点になっている。
CNBCが9日(現地時間)に報じたところによると、Verdantは英国のデータセンターが生み出す直接雇用を約4400人と試算した。techUKが示す2万4300人の5分の1にも満たない水準だ。さらに、計画中の施設を含めた直接運営の雇用も約1万400人にとどまると見込み、techUKが2035年までに追加創出可能とした4万200人との開きは大きい。
こうした差は、試算手法の違いによるものだ。Verdantは英国国内のデータセンター20カ所を対象に、許認可書類や企業発表を基に実際の人員データを分析した。そのうえで、最新の大規模施設では自動化の進展と規模の経済により、必要な運営要員が減少しており、メガワット(MW)当たりの雇用創出効果は過去の小規模施設より大きく低下していると指摘した。
これに対しtechUKは、報告書について「サンプル数が過度に少なく、データセンター内部の直接雇用だけに焦点を当てている」と反論した。サプライチェーンやクラウド、AIサービスなど、幅広い経済活動を支える効果も含めて評価すべきだという立場だ。
英国政府も、MW当たりの雇用だけで経済価値を判断するのは適切ではないとの認識を示した。データセンターは国家安全保障やデジタル主権の面でも重要だとしており、2024年には国家重要基盤施設(CNI)に指定している。
もっとも、AIインフラ投資に伴う雇用増が見込まれる分野もある。Randstadが5000万件超の求人情報を分析したところ、2022年末以降、ロボット技術者の需要は107%増、冷却・空調(HVAC)エンジニアは67%増、産業オートメーション技術者は51%増だった。恒常的なデータセンター運営要員よりも、建設、電力、冷却、自動化といった専門職で需要が目立つという。
Alphabet、Microsoft、Amazon、Metaも2026年、AIデータセンターや半導体などのインフラを軸に、総額で約7000億ドル規模の設備投資を計画している。大量の電力と土地を必要とするAIインフラの経済価値を、常設雇用の規模だけで測れるのか。こうした議論は今後、さらに強まりそうだ。