JD.comが、全国の物流網の全面自動化に向けた大規模投資に乗り出す。今後5年間でロボット300万台、無人配送車100万台、配送ドローン10万台を導入する計画で、併せてエンボディドAIの学習データ収集や研究・計算基盤の整備も進める。
サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)の9日付の報道によると、JD Logisticsは同日、北京で開いたイベントで産業用「ウルフロボット」シリーズを公開し、大規模な物流自動化構想を明らかにした。
狙いは、物流現場の反復作業を機械に置き換え、サプライチェーン全体の自動化を進めることにある。JD Logisticsの技術委員会主席、チョウ・フォンは、5年以内に関連設備を導入し、完全自動化されたサプライチェーンの構築を目指すと説明した。
JD LogisticsでエンボディドAIロボット事業を統括するリウ・リガーは、ウルフロボットのシステムについて、商品ピッキングから仕分け、輸送、配送までを最小限の人手で運用できるよう設計したと述べた。
JD.comが公開したロボット群には、氷点下20度の環境で稼働する機器のほか、薬局向けの自動出庫設備、配送ドローンなどが含まれる。同社は今後、負荷が大きく反復性の高い作業や、人手の投入が難しい環境を優先して自動化を進める方針だ。
こうした自動化戦略は、雇用構造の見直しとも連動する。JD.comと系列エコシステム企業が抱える配送・物流人材は約70万人に上る。自動化の拡大に伴って雇用縮小への懸念も出かねない中、創業者のリウ・チャンドンは今年初め、「ニルヴァーナ・プラン」を打ち出した。
同プランでは、配送ドライバーや倉庫作業員をロボットサービスや保守などの技術職へ再教育し、現場人員の維持につなげることを重視している。
JD.comは、ハードウェアの拡充と並行して、エンボディドAI開発の中核となるデータ確保にも力を入れる。汎用エンボディドAIモデルの学習には大規模なデータが必要で、同社は倉庫や小売店、薬局などの拠点を活用し、1,000万時間を超える実運用データを収集する計画だ。
チョウ・フォンは、こうした物理的な運用基盤そのものが同社の競争力になるとの見方を示した。
研究開発インフラの整備も進める。JD.comは中国全土に80カ所超の「ロボベース」拠点を設け、ロボットの研究、試験生産、データアノテーション、装備の高度化、保守を担わせる計画だ。単なる自動化機器の大量配備にとどまらず、開発から運用までを一体で回す体制を構築する。
計算資源の確保にも動いた。JD.comは同日、中国の半導体設計会社Moore Threadsと、中国製チップ10万個規模の計算クラスターを構築する契約を締結した。両社はこのクラスターをAIモデルの学習・推論やエンボディドAIの応用に活用し、データ収集からモデル学習、シミュレーション、配備までの開発パイプラインに中国製チップを組み込む計画としている。
JD.comの物流自動化戦略は、ロボット導入に加え、データ収集、研究拠点、半導体ベースの計算インフラ整備までを視野に入れたものだ。今後は自動化の進展とともに、70万人規模の現場人材の再教育をどこまで進められるかが焦点となる。