IonQは「Superion 256」で、性能競争に加えて量産体制の構築も打ち出した。写真=Shutterstock

IonQは、256量子ビットの第6世代量子コンピュータ「Superion 256」を発表し、受注を開始した。顧客への納入は2027年を予定している。

ブロックチェーンメディアのDecryptが9月9日(現地時間)に報じた。IonQはSuperion 256を通じ、量子コンピュータの量産体制づくりを本格化させる方針だ。量子コンピュータ本体の開発に加え、クラウド経由でのシステム提供、量子ネットワーキング、センシング、セキュリティ技術の開発も進めている。

今回の発表で同社が前面に押し出したのは、量子ビット数そのものよりも生産体制の見直しだ。電子制御機能をチップ内に統合し、従来より低コストで多くの量子コンピュータを生産できる設計にしたとしている。

ニコロ・デ・マシ会長兼CEOは、Superionは2件の戦略的買収の成果だと説明した。Oxford Ionicsの技術によって、自然状態のトラップドイオン量子ビットを標準的な電子機器で制御できるようになり、SkyWaterによって半導体ベースの製造と生産拡大の基盤を確保したという。

IonQによると、SkyWaterは初の256量子ビットプロセッサの試作を完了した。米国内の複数拠点では、試作機で最初のイオンを閉じ込める工程も進めたとしている。

もっとも、256量子ビットの実機システムとしての性能を示す結果は、現時点では公表されていない。初号プロセッサと試作機の製作は確認できるものの、完成したシステムで256量子ビットがどの程度安定して同時動作するかは、なお検証が必要だ。

量子コンピュータの性能は、量子ビット数だけでは測れない。量子ビットが増えれば、より複雑な計算に対応できる可能性は広がる一方で、外部環境のわずかな揺らぎでもエラーが生じやすくなる。実用性を見極めるには、量子ビット数に加え、エラー率や安定性、誤り訂正能力を総合的に評価する必要がある。

IonQはSuperion 256を、量産を見据えたプラットフォームと位置付ける。デ・マシCEOは、量子コンピューティングも古典コンピューティングと同様、半導体製造の手法を取り入れることで拡張性を高められると説明し、1台ずつ組み上げるのではなく、数百台単位での生産を想定して設計したと述べた。

生産効率の改善も進んでいる。SkyWaterは、チップ設計のサイクルを従来の9カ月から2カ月へ短縮したとしている。Superion 256は標準的なサーバーラックに搭載できる形で設計され、IonQのクラウド経由で利用できるようにする。

IonQは2026年初めに初号機の先行販売を始めており、顧客への納入は2027年からとなる見通しだ。あわせて、2027年にエラー耐性型コンピューティングのデモ実施を目標とする「Superion 10K」を開発中で、2028年の商業生産を目指している。

今回の発表は、量子コンピュータがビットコインのセキュリティに与える影響を巡る議論が続く中で行われた。十分に強力な量子コンピュータが実用化されれば、ビットコインの公開鍵から秘密鍵を導き出し、暗号化された資産を奪えるのではないかとの懸念が指摘されてきた。

ただ、256量子ビット機が直ちにビットコインの256ビット級の安全性を破れるわけではない。実際の攻撃には、誤り訂正された量子ビットを用い、長時間にわたって安定的に計算を続ける能力が必要になる。物理量子ビット数と、ビットコインの暗号方式が持つ安全性を単純に比較できないのはこのためだ。

それでも、暗号資産業界では量子コンピュータへの備えが動き始めている。Galaxyは7月、ビットコインの量子セキュリティに関する研究開発を支援するため、最大500万ドル(約7億5000万円)を拠出すると発表した。開発者向け助成金や研究活動、諮問委員会の設置などを支援対象に含めている。

Superion 256の発表は、量子コンピュータの商用化競争が単なる性能開発から量産段階へと広がりつつあることを示した。同時に、量子コンピューティングの進展が暗号資産のセキュリティにどこまで影響し得るのかという論点も、改めて浮き彫りにしている。

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