英国の捜査当局が、暗号資産をマネーロンダリングや詐欺に絡む主要リスクの一つと位置付け、捜査体制の強化を進めている。英国家犯罪庁(NCA)傘下の国家経済犯罪センター(NECC)は、暗号資産を経済犯罪対策の重点項目9分野のうち3位に位置付けた。
Cryptopolitanが9日(現地時間)に報じたところによると、NECCはこのほど公表した2025〜2026年の年次報告書で、暗号資産対応を重点課題として改めて打ち出した。優先項目はNECCが金融行為監督機構(FCA)、内務省、財務省と合意し、2025年7月に初めて公表したもの。順位は1位が専門的協力者、2位が政治的要人、3位が暗号資産とされた。
NECCは、犯罪組織が摘発を逃れながら違法資金を大規模に移動させる手段として暗号資産を利用しているとみている。国境をまたぐ資金洗浄ネットワークが、現金と暗号資産を組み合わせた手法を用いているほか、AIを使った自動化攻撃や合成身分も新たな脅威に挙げた。これを踏まえ、暗号資産分野で情報主導型の捜査能力を一段と強化する方針を示した。
取締りの実績も拡大している。ロシア語圏の資金洗浄組織を標的にした「Destabilise」作戦では、これまでに129人を逮捕し、英国で現金と暗号資産を合わせて2500万ポンド超を押収した。捜査当局によると、この組織は麻薬や銃器取引で得た現金を暗号資産に換え、制裁逃れなどに使った疑いがあるという。
今年3月に実施した「Atlantic」作戦では、英国、米国、カナダの当局がフィッシング詐欺を追跡し、2万人超の被害者を確認した。犯罪収益とみられる1200万ドル超を凍結し、世界で確認された関連の暗号資産詐欺被害額は4500万ドルを超えた。
NCAは、英国を経由するか、英国内で洗浄される資金は年間1000億ポンドを超える可能性があると推計している。一方で、そのうち暗号資産が占める割合は示していない。
もっとも当局は、プライバシー技術そのものを犯罪ツールと断定することには慎重な姿勢を保っている。NECCと内務省の議論を踏まえ、王立合同軍事研究所(RUSI)は、ゼロ知識証明などのプライバシー強化技術について、合法的な利用者の機密性を守りながら規制対応と両立し得るとの見方を示した。