米財務省のスコット・ベッセント長官は9日、米上院に対し、デジタル資産の包括的な規制法案「Clarity Act」の審議入りを求めた。法案が停滞すれば、米国のデジタル資産分野における主導権が弱まりかねないと警告している。
ブロックチェーンメディアのU.Todayなどによると、ベッセント長官は同日、X(旧Twitter)への投稿で、上院が8月の休会明けに法案審議の手続きに合意し、立法プロセスを前に進めるよう要請した。
ベッセント長官は、審議が進まなければ、米国がデジタル資産の将来を主導する意思を欠いているとのメッセージを、同盟国にも敵対国にも与えかねないと指摘した。あわせて、デジタル資産の悪用に対処する国家安全保障上の手段を強化する機会を失う可能性にも言及した。
Clarity Actは、デジタル資産市場に関する包括的な規制枠組みの整備を柱とする法案だ。証券やコモディティ、ステーブルコインなど、資産の性質に応じて規制当局の所管を切り分ける内容を盛り込んでおり、デジタル資産業界はかねてルールの明確化を求めてきた。
米上院は15日、Clarity Actの審議を本格化させるかどうかを決める手続き採決を行う予定だ。可決には60票が必要とみられる。共和党は現在53議席を持っており、所属議員が全員賛成しても、少なくとも7人の民主党議員の賛同が必要になる。この採決は、法案の最終可決を直接決めるものではない。
法案審議は今年に入って長く停滞してきた。主な争点の一つは、ステーブルコイン保有者への収益還元を巡る銀行業界と暗号資産業界の対立だ。
さらに、倫理規定も新たな論点として浮上している。7月に議論された修正案には、政府高官が暗号資産を宣伝したり、そこから収益を得たりすることを制限する内容が盛り込まれた。民主党はこれに加え、高位公職者と関係する暗号資産事業に対する倫理規定をさらに強化するよう求めている。
ノースカロライナ州選出の共和党上院議員トム・ティリス氏は、追加の妥協がなければ法案が失敗に終わる可能性があると警告した。一方、暗号資産政策を支持するダン・スパラー氏は、想定以上に多くの民主党議員が賛成に回る可能性があるとの見方を示した。
採決を前に、暗号資産業界による土壇場のロビー活動も強まっている。Clarity Actを支持するCedar Innovation Foundationは、全国のケーブルテレビで大規模な広告キャンペーンを開始した。広告は3本で、このうち1本は法案に反対する銀行業界を名指しで批判し、残る2本は法案支持を訴える内容だという。
暗号資産支持派として知られるワイオミング州選出の共和党上院議員シンシア・ルミス氏も、法案成立が頓挫すれば、米国が金融分野の主導権を中国に明け渡しかねないと主張した。
ドナルド・トランプ米大統領もこれまで、米国がビットコインや暗号資産分野で「議論の余地のない先導国」としての地位を維持するには、強力な法案の可決が必要だと訴えてきた。
15日の手続き採決は、米国のデジタル資産規制立法が次の段階に進むかどうかを占う最初の大きな分岐点となりそうだ。