マクロ指標待ちで主要暗号資産は方向感を欠いた一方、Zcashは個別材料を手掛かりに上昇した。写真=Shutterstock

ビットコインは9日、米株式市場の取引開始後に上げ幅を失い、7万8000ドル台へ押し戻された。今週発表される米生産者物価指数(PPI)と米消費者物価指数(CPI)、さらに15〜16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に市場の警戒感が強まっており、ブレント原油の100ドル台乗せもリスク資産の重荷となった。

ブロックチェーンメディア「The Defiant」によると、ビットコインはアジア・欧州時間に上昇したが、ニューヨーク時間の序盤にその上昇分を失った。いったん前日終値近辺まで下げた後、CoinGeckoによると24時間ベースで0.1%安の7万8591.04ドルで推移した。日中高値は7万9701.36ドル、安値は7万8308.42ドルだった。

主要アルトコインも総じて軟調だった。Ethereumは0.2%安、XRPは1.2%安、Solanaは1.3%安、BNBは2.1%安だった。暗号資産全体の時価総額は2兆7900億ドルで、24時間ベースでは0.04%増。ビットコインの市場シェアは56.5%だった。

市場の焦点は米インフレ指標に集まっている。PPIとCPIは、FOMC前に公表される最後の主要物価指標となる。予想市場のPolymarketでは、15〜16日のFOMCで0.25ポイントの利上げが実施される確率を55%、据え置きの確率を45%と見込む。8月24日時点では据え置き観測が優勢だったが、足元では利上げ観測が上回っている。

Laser Digitalのデリバティブ・トレーディングデスクは、現物市場が狭いレンジで推移しており、物価指標の発表を前に市場全体が警戒姿勢を強めていると分析した。今回はPPIがCPIに先立って公表されるため、通常とは異なる形で、FOMC前の最初の物価シグナルとして注目度が高まる可能性があると指摘した。

マクロ環境もリスク資産には逆風だった。ブレント原油は一時1バレル=100.74ドルまで上昇し、7月23日以来初めて100ドル台に乗せた。金先物は上昇し、米株価指数先物は軟調に推移。米10年債と30年債の利回りも高水準を維持した。

需給面では、米国のビットコイン現物ETFへの資金流入に一服感が出ている。8日は4660万ドルの純流出となり、1日以来初めて資金流出に転じた。直前の3営業日では合計10億1000万ドルの純流入を記録しており、このうち3日単日では7億3080万ドルが流入していた。

一方、個別銘柄ではZcashが強い値動きを見せた。24時間で7.2%上昇し、1284.42ドルを付けた。直近7日では56.3%高、30日では152.3%高となり、時価総額は217億4000万ドルだった。上位20トークンのうち、2%超上昇したのはZcashだけだった。

Zcash高の背景としては、Digital Currency Groupによる資金拠出とETF需要を指摘する見方が出ている。最近の開示によると、Zcash ETFではDigital Currency Groupが約1億ドル相当の信託持分を取得し、その対価として8万5705.32563297ZECを現物で拠出した。取引は市場でZECを買い付ける形ではなく、保有するZECをファンドに拠出してETF持分を受け取る形で実施された。

Zcash ETFは、上場から2週間で運用資産が5億ドルを超えたほか、上場投資商品への転換後の累計純流入も7000万ドルを上回ったと公表した。NYSE Arcaでは、ティッカー「ZCSH」のオプション取引も始まった。

もっとも、市場心理が大きく悪化しているわけではない。暗号資産の恐怖・強欲指数は66と前日の69から低下したものの、8月29日以降は60を上回る水準を維持している。Laser Digitalは、オプション市場でコールオプション選好が強まっているとして、現物市場の短期的な弱さに比べ、投資家の上昇期待はなお崩れていないと分析した。

当面の暗号資産市場は、今週の物価指標と次回FOMCの結果に左右される公算が大きい。ビットコインが8万ドル目前で再び伸び悩む中、市場はインフレ指標、金利、資源価格の動きを同時に見極めようとしている。

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