マーク・アンドリーセン氏(Andreessen Horowitz共同創業者)。写真=a16z公式サイト

シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)の共同創業者、マーク・アンドリーセン氏は、AIの普及によってソフトウェアの世界浸透が一段と加速しているとの見方を示した。あわせて、a16zが出資するAIコーディング企業Cognitionへの追加投資にも言及し、同社のコーディングエージェント「Devin」を軸に、ソフトウェア開発の生産性が大きく変わりつつあると訴えた。

同氏はこの内容をX(旧Twitter)で共有したほか、自身のブログでも持論を展開した。掲げたテーマは「ソフトウェアが、さらに速く世界を飲み込んでいる」というものだ。

アンドリーセン氏は15年前、「ソフトウェアが世界を飲み込んでいる」と題した文章で注目を集めた。今回は、その流れを引き継ぎながら、AIがそのスピードをさらに押し上げている点を強調した。

ブログでは「15年前、ソフトウェアが世界を飲み込んでいると書いた。当時は議論を呼ぶ主張だったが、いまや現実になった。ソフトウェアはいま、コンピューティングの速度で世界を飲み込もうとしている」と述べた。

同氏によると、最初の文章を公表してからの15年間で、世界の時価総額上位10社に占めるテック企業の比率は31.5%から94.4%に上昇した。

そのうえで、「こうした変化が進む間も、ソフトウェアを作る人は世界人口の300人に1人にすぎず、コードは人の手で1行ずつ書かなければならなかった」と指摘した。ソフトウェアがこれまで人間の作業速度に制約されてきたのに対し、いまはコンピューティングの速度で拡大しつつある、というのが同氏の見立てだ。

具体例として挙げたのが、a16zの出資先であるCognitionだ。3年前に同社がDevinの開発を始めた当時は、「コーディングエージェント」という概念自体がまだ一般的ではなかったが、足元では状況が大きく変わったとしている。

アンドリーセン氏は「いまソフトウェアエンジニアに尋ねれば、コードの大半をエージェントが書いているという答えが返ってくるだろう」と説明した。さらに、Cognition内でもDevinが書く本番コードの比率が、この1年で13%から90%超に高まったと明らかにした。

同氏によれば、エージェントがコードの90%を書くようになれば、エンジニア1人当たりの生産性は10倍に高まる。「10倍エンジニア」は「100倍エンジニア」へと進化し、エンジニアの役割も、自らコードを書くことから複数のエージェントを同時に運用することへ移っていくという。

Cognition創業者のスコット・ウー氏も、「私たちが生きている間に、エンジニアはレンガ職人から建築家へ変わる。手作業でシステムを組み立てるのではなく、システムを設計する創造的な仕事に集中するようになる」と述べた。

導入事例も紹介した。Mercedes-Benzでは、8カ月かかると見込まれていたCOBOLのマイグレーション作業をDevinで8日間で完了したという。Rivianではテストコード生成の速度が10倍に向上した。Itauをはじめとする大手金融会社では、数千のコードリポジトリにまたがるセキュリティ脆弱性をDevinが検出・修正しており、このうち70%は人手を介さず自動処理しているという。

一方でアンドリーセン氏は、AIによってエンジニアの仕事が減るとの見方には否定的だ。過去にも同様の懸念は繰り返し浮上したが、実際には逆の結果になってきたと指摘する。

同氏は「コンパイラが登場した時も、オープンソースが広がった時も、クラウドが普及した時も、エンジニアの仕事は減ると予想された」と振り返った。そのうえで、「実際に起きたのは、ソフトウェアを作るコストが下がったことだけで、ソフトウェアとエンジニアに対する需要はむしろ爆発的に増えた。人間の欲求に終わりはなく、経済的需要も尽きない。仕事は増え続ける」と述べた。

さらに、こうした変化はコーディングに限った話ではないとも強調した。「ソフトウェアが世界を飲み込み続けるなら、ソフトウェアを作るプロセスそのものの自動化は、あらゆる産業のスピードを同時に引き上げる」としている。

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