日本の販売店の間で、グラフィックス処理装置(GPU)の再値上げを警戒する動きが出ている。背景にあるのはメモリ供給の逼迫だ。グラフィックスカードに搭載するビデオメモリ(VRAM)の価格上昇が続いており、GPUの店頭価格に再び波及する可能性がある。
8日付(現地時間)のTechRadarなどによると、小売業者Appliedは、GPUの購入やアップグレードを検討しているユーザーに対し、できるだけ早めの購入を勧めた。今回の値上げがどのGPUモデルに及ぶのかは明らかになっていない。
日本のGPU市場では、すでに値上げの兆しが出ている。秋葉原の販売店は8月、GPU価格が従来より20~30%程度上昇する可能性があると案内していた。NVIDIAのボードパートナーでも価格引き上げの動きが取り沙汰されており、日本以外の地域にも値上がりが広がる可能性がある。ただ、実際にどの地域や製品まで波及するかはなお不透明だ。
価格上昇の主因として挙がっているのが、PC部品全般に影響しているメモリ供給の逼迫だ。VRAMの値上がりによってGPUの製造コストが膨らみ、販売価格にも上昇圧力がかかっているという。2026年に入ってからもPCハードウェア市場ではメモリ不足の影響が続いており、手ごろな価格のアップグレード用パーツを確保しにくい状況が続く。
米国市場でも、主要GPUの販売価格はメーカー希望小売価格(MSRP)を大きく上回っている。NVIDIAのGeForce RTX 5080はBest Buyで1699ドルで販売されている。GeForce RTX 5060はMSRPが299ドルだが、実勢価格は450~500ドルに達しているという。
AMD製品も例外ではない。Radeon RX 9070 XTのMSRPは599ドルだが、Gigabyteのオーバークロックモデルは最大929ドルで販売されている。Radeon RX 9060 XT 16GBも、MSRPを少なくとも200~300ドル上回る水準で流通しており、主要販売網ではサードパーティー製GPUの高値が目立つ。
メモリ供給の逼迫は、短期間では解消しにくい見通しだ。Samsung Electronicsと業界アナリストは、メモリ不足が2027年以降まで続く可能性があるとみている。PC部品の価格上昇と供給不安は、当面続く可能性が高い。
もっとも、値上げ懸念だけを理由に足元で買い急ぐべきではないとの見方もある。主要販売網では、NVIDIA GeForceとAMD Radeonのサードパーティー製GPUの多くが、すでに割高な価格で販売されているためだ。既存PCのGPUを単純に載せ替えるのが目的であれば、高値を受け入れてまで購入する必要性は大きくないとの指摘も出ている。
その半面、これからPCゲーミングを始める消費者にとっては、GPU購入を検討する余地はある。ただ、値上げへの警戒感から需要が一気に集中する「パニック買い」は、かえって価格を押し上げる恐れがある。販売店側も慎重な判断を呼びかけている。
GPU価格がさらに上がるかどうかは、メモリ供給の逼迫と、それに伴うVRAM価格の動向に左右される。日本の販売店による警戒感が、実際に世界的なGPU価格の再上昇につながるのか注目される。