退職資産にビットコインを組み入れる場合でも、配分はごく一部にとどめるべきだとの見方が年金・資産運用業界で広がっている。長期的な値上がり余地を認めつつも、退職後の取り崩し局面では価格変動の大きさが損失拡大につながりやすいためだ。専門家や運用会社の提言は、1~2%、2~5%、上限5%以内におおむね収斂している。
Cointelegraphが9月8日(現地時間)に報じたところによると、年金業界や資産運用会社では、ビットコインを退職ポートフォリオの中核資産としてではなく、補完的な資産として限定的に組み入れるべきだとの認識が広がっている。米退職保障研究所の調査では、回答者の77%が、職場の退職年金に暗号資産を含めることを危険だと認識していた。
一方で、一定の条件下では組み入れ余地があるとの見方もある。BlackRockは、リスク許容度の高い投資家であれば、分散ポートフォリオにおけるビットコインの比率は1~2%が妥当になり得るとの見解を示した。Fidelityも、退職ポートフォリオにビットコインを2~5%程度組み入れることで、長期的な運用成績の改善につながる可能性があると分析している。
デジタル資産分野に詳しいファイナンシャルプランナーのライアン・パース氏は、暗号資産を既存ポートフォリオに単純に上乗せするのではなく、ほかの資産の一部を置き換える発想で捉えるべきだと指摘した。そのうえで、暗号資産の配分は投資資産全体の5%を超えない水準が望ましいとしている。
慎重論の背景にあるのは、退職期の投資家にとってビットコインの高いボラティリティーがより大きな打撃になり得ることだ。若年層であれば急落後の回復を待つ時間を確保しやすいが、退職前後は生活費を賄うために資産を取り崩す必要が生じやすい。相場下落時に売却を迫られれば、その後に価格が戻っても損失を埋めにくくなる。
退職資産運用の代表的な指標である「4%ルール」で知られるビル・ベンゲン氏も、退職ポートフォリオでは資本保全を最優先すべきだとみる。同氏は、ビットコインがポートフォリオに一定の役割を果たし得ることは認めつつ、大きな損失を避けるため配分は5%以内に抑える案を推奨した。
機関投資家も姿勢は慎重だ。一部の年金基金や大口投資家は、規制下にあるビットコイン現物ETFを通じて間接的に投資している。一方で、暗号資産を直接保有せず、関連企業株への投資によって業界成長の恩恵を取り込む戦略も採られている。
米最大の公的年金であるCalPERSは、企業によるビットコイン保有量が最も多いとされるStrategyに投資したと伝えられている。教職員向けの大規模年金基金であるCalSTRSも、ビットコインを直接保有せず、Coinbaseなど暗号資産関連企業への投資を選択している。
専門家の多くは、「ビットコインが長期的に上昇するか」と「退職資産として耐えられるか」は別の問題だと指摘する。長期成長を見込むとしても、退職資産全体を価格回復の成否に委ねるべきではないという考え方だ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のファイナンス教授、ジョナサン・パーカー氏も、暗号資産が分散型の退職ポートフォリオに入り得る余地はあるとしながらも、ビットコインそのものより、暗号資産産業で実際に売上を生み出している企業の株式や債務に投資する手法を提案した。
今回の論点は、退職資産から暗号資産を全面的に排除するかどうかではない。どの程度までを許容可能なリスクとして組み入れるかにある。長期成長の可能性を認めながらも、高い変動性による退職資産の毀損を避けるため配分を少額に抑える――。これが、年金・資産運用業界で共有されつつある現実的な対応といえそうだ。