写真=Kakao Mobilityの自動運転車両

Kakao Mobilityは、自動運転開発の軸足を「大量の走行データ収集」から「難易度の高いエッジケースの選別・活用」へ移す。江南での深夜自動運転サービスで蓄積した走行記録を学習データとして活用し、年内には認知と判断を単一のE2E(エンドツーエンド)モデルに統合する計画だ。

同社の自動運転開発チームでAI走行パートを率いるイム・インホ氏は9日の記者向け説明会で、「膨大なデータの中から難しいデータをどれだけ効率よく選び出せるかが、最近のAI競争で重要になっている」と述べた。

E2Eモデルは、センサーが捉えた情報を単一のAIが受け取り、そのまま運転操作に変換する方式だ。従来のように運転ルールを個別に組み込むのではなく、大量の走行記録を学習させることで運転判断を身に付けさせる。

Kakao Mobilityは3月16日、江南で自社技術による深夜自動運転サービスを開始した。8月31日時点の累計運行件数は2000件、累計走行距離は1万3000kmを超えた。同社は、この期間に蓄積した走行記録をAIモデルの学習資産として活用すると説明した。

同社は走行状況を難易度別に5段階で分類している。第1段階は信号や交通ルールに従う基本走行、第2段階は防衛運転中心の場面、第3段階は周辺車両との関係を読みながら車線変更や右折・左折を行う場面、第4段階は割り込み車両やバイクへの対応、第5段階は予測が難しい危険への対応だ。後半の段階ほど走行の難易度は高くなる一方、得られるデータ量は少なくなる。

イム氏は、自動運転の性能を左右するのは第4、第5段階のデータであり、この領域のデータが最も希少だと説明した。データ量と走行性能は一定水準までは比例するものの、ある段階を超えると同じ量のデータを投入しても性能向上の伸びは変わってくるとし、「差を生むのはデータだ」と強調した。

同社は、こうした希少データを「エッジケース」と呼ぶ。自動運転車はその状況を自動検知して保存する仕組みを備えており、自動運転モードから手動モードへ切り替わる瞬間を例外状況として分類し、その前後の区間を合わせて記録する。

具体例としては、未明に違法Uターンした車両、下水道工事で中央線を越える必要があった区間、江南駅近くの大通りに酔客が飛び出したケースなどを挙げた。収集した記録は5段階のプロセスを経て学習データ化される。従来は人がフレーム単位で見返して判別していたが、現在はサーバーにアップロードした後、数十分以内にAIが処理するという。イム氏は「難易度の低い地域で1年間走るより、江南で1カ月走る方がAIモデルの学習にははるかに有効だ」と話した。

事故のない走行データだけで生じる空白は、シミュレーターで補完する。事故のない記録だけで学習すると、AIが事故そのものの状況を学べない「生存者バイアス」に陥る可能性があるためだ。イム氏は、自社に責任のある対人・対物事故はまだ発生していないとした上で、シミュレーター上で意図的に事故状況を作り、検証を進めていると説明した。実際に衝突が起きた際の車両反応や、他車が自動運転車に危険な挙動を取る場面での対応などを確認しているという。

こうしたデータ基盤は、8年にわたる実証を通じて築かれてきた。Kakao Mobilityは2018年に自動運転TFを立ち上げ、2020年3月に国土交通部の臨時運行許可を取得。2021年12月には板橋で旅客運送サービスを運営した。2024年9月にはソウル市の自動運転運送プラットフォームの統合運営を担い、今年3月16日に江南で2台による深夜サービスを開始、8月20日には6台体制に拡大した。

同社は今後、確保したデータを判断アルゴリズムの構造転換に投入する。2025年までは認知・判断・制御を分けた3段階のモジュール構造を採用してきたが、今年1〜3月期には判断領域でルールベースのプランナーとAIプランナーの併用に切り替えた。年末時点の目標は、認知と判断を単一のE2Eモデルに統合し、その結果をルールベースの安全評価器で検証した上で、制御命令に渡す構成にすることだ。

イム氏は、E2Eへの転換によって認知段階での誤りが減り、誤認識に伴う急減速など、乗客が不便を感じていた挙動も改善できると見込む。「自動運転へ向かう道筋は明確だ。安全を最優先に設計したE2Eモデルと、より賢い自動運転を支える高品質データが鍵になる」と述べた。

キーワード

#自動運転 #AI #E2E #走行データ #エッジケース #シミュレーター #江南
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.