GMO AI&ロボティクス商社(GMO AIR)は9月8日、故障したヒューマノイドロボットの現場診断や修理に対応する専用車「GMOヒューマノイド救急車」を公開した。代替機や交換部品、診断機器を搭載し、現場での一次対応から拠点での精密修理までを一貫して支援する体制を整える。
同社は、この車両をヒューマノイド保守に特化した専用車として日本初だとしている。ヒューマノイドの活用が広がるなか、機体性能だけでなく、トラブル発生時に迅速に復旧できる保守体制の重要性が高まっているとみている。
専用車は、ヒューマノイドに異常や故障が生じた際に現場へ出動し、点検や修理を行う想定だ。車内には代替用のヒューマノイド本体に加えて、主要部品や消耗品、交換用部品、診断機器などを積載する。
現場には、普段からヒューマノイドの調整を担当するエンジニアも同行する。機体の状態を確認したうえで、必要な部品交換や修理にあたる。
現場で対応しきれない場合は、ロボットを東京都渋谷区のAI開発拠点「GMOヒューマノイドラボ」などへ搬送し、追加整備を実施する。現場出動から精密修理までをつなぐ保守体制を構築した。
車内にはヒューマノイド専用の担架のほか、修理機材を積み込めるスペースも設けた。外観は白い車体に赤いラインを配し、一般的な救急車を想起させるデザインとした。デザインは製品デザインなどを手がけるGranmanasのモリタ・ヤスミチ代表が担当し、同社によると、各国の緊急車両を参考に視認性と機能性を両立させたという。
保守サービスは、既存のサブスクリプション型商品とも連携する。修理に時間を要する場合、利用者は月額7万円のサブスクリプションを通じて現場で代替機の提供を受けられる。追加費用なしで利用できる期間は年間最大1.5カ月分としている。
同社が保守体制の重要性を改めて認識するきっかけの一つとなったのが、8月に中国・北京で開かれた「世界ヒューマノイドロボット運動会」だ。GMO AIRは当時、中国Unitreeのヒューマノイド「G1」をベースにしたカスタム機で100メートル、400メートル、1500メートル競技に参加したが、400メートル予選中に転倒し、頭部が破損するトラブルが発生した。
その際、現場エンジニアは予備部品を使って約10分で機体を復旧させた。準決勝まで約20分しかない状況だったが、再び競技に投入できたという。
この経験は、ヒューマノイド運用における保守の重要性を示す事例になった。GMO AIRのタキザワ・ショウタ シニアリサーチエンジニアは、用途や使い方によって差はあるとしたうえで、体感値としては約3カ月の使用で30〜40%のヒューマノイドに何らかの部品故障が発生すると説明した。
また、激しい動作を検証する過程では、ほとんどのヒューマノイドが故障を経験していることも明らかにした。人に近い動きを実現するほど、関節や駆動系に繰り返し負荷がかかり、保守需要が増える可能性があるという。
GMO AIRは、ヒューマノイドの社会での活用が進むほど、保守と運用の体制が競争力の中核になるとみている。ウチダ・トモヒロ代表取締役社長は発表会で、今後はより過酷な環境や用途での活用が広がるにつれ、故障の発生や保守需要も増えていくとの見方を示した。
こうした観点からみると、今回のヒューマノイド向け専用車は、単なるPR施策にとどまらず、事業運用のインフラを先行して整備する取り組みといえる。普及が進むほど、機体性能の競争に加え、故障時にどれだけ早く復旧し、代替機を投入できるかがサービス競争力を左右しそうだ。