EU域内で販売されるスマートフォンの8割超で、修理や交換部品に関する情報開示が不十分であることが分かった。修理する権利の拡大を目的にEUが関連ルールを施行してから1年がたったが、多くのメーカーで実効性のある情報提供に至っていない実態が浮き彫りになった。
Gigazineによると、市民団体のRight to Repair Europeは、EUで販売されるスマートフォン2334機種を調査した結果、82%で必要な修理情報が適切に提供されていなかったと明らかにした。
EUは域内で販売するスマートフォンについて、修理や交換部品に関する情報の明確な開示を求めている。端末には、エネルギー効率に加え修理のしやすさなどを示すエネルギーラベルの表示が必要で、消費者はラベルや関連する情報ページを通じて、修理手順や交換部品の価格を確認できなければならない。
比較的対応が進んでいた事例として挙がったのが、AppleのiPhone 17だ。エネルギーラベルには、エネルギー効率等級A、バッテリー駆動時間41時間、耐落下性能等級B、修理容易性等級C、バッテリー容量が初期比80%まで低下するまでの充電サイクル1000回、IP68等級などが記載されている。
ラベルのQRコードを読み取ると、EUの製品情報ページに移動できる。ページ下部にはAppleの修理情報ページへのリンクも設けられている。
ただ、消費者が実際に修理情報へたどり着きやすい形で情報を示していた製品は少数にとどまった。調査対象のうち、修理手順や交換部品価格をすぐ確認できるページへのリンクを提供していたスマートフォンは18%にすぎなかった。
残る82%では、関連リンクがないか、情報欄が空欄だった。情報が記載されていても、消費者が実際に活用しにくい形で掲載されている例が多かったという。
問題事例としては、中国メーカー製スマートフォン「Oukitel WP35 Pro」が挙げられた。同製品は修理容易性等級をAと表示していたが、情報ページ下部に記載されたリンクは実際には機能していなかった。製品情報シートでも、URLの入力欄として設けられた3項目はすべて空欄だった。
形式上は要件を満たしていても、実質的な情報提供になっていないケースもあった。Right to Repair Europeによると、調査対象の約8%は具体的な修理情報を示さず、「説明書を確認せよ」といった実効性に乏しい案内だけを掲載していた。
また約5%では、TemuやAliExpressなどのECサイトにリンクしていた。消費者が修理手順や交換部品価格を確認できるようにするという制度の趣旨から外れる対応だと指摘している。
Right to Repair Europeは、メーカー側の情報提供だけでなく、制度の管理・監督プロセスにも不備があると主張する。申請データに空欄があれば容易に把握できるはずなのに、実際には数千件の空欄がそのまま通過しているという。
同団体は、市場監視当局に対し、メーカーの順守状況を確認するための監視体制強化を求めた。情報を提出したかどうかだけでなく、リンクが実際に機能するか、消費者が必要な情報を容易に見つけられるかまで点検すべきだとしている。
要件を満たしている企業についても、情報の探しやすさには課題が残る。Right to Repair Europeは、AppleやSamsung Electronicsなど一部メーカーが関連情報を提供している一方で、消費者がサイト上で修理情報や交換部品情報にたどり着くまでに複数回のクリックを要すると指摘した。
スマートフォンの購入を検討する消費者が、実際にこうした手順を踏んでまで修理情報を確認するのかについても、疑問が呈されている。
今回の調査は、EUのエコデザイン関連規則の施行から1年を経ても、スマートフォンの修理情報開示がなお形式的な水準にとどまっている実態を示した。
修理のしやすさや部品情報の開示は、消費者が製品寿命や維持コストを比較したうえで購入を判断するための重要な情報だ。だが実際の運用では、リンク切れや空欄、実効性の低い案内が目立ち、制度の趣旨が十分に機能していないとの見方が出ている。