画像=Xヘルプセンターのオリジナルコンテンツ報酬案内

生成AIの普及で文章や画像、動画の制作コストが下がり、コンテンツ量は急増している。一方で、似通った内容や他人の投稿を一部改変しただけのコンテンツも増えており、プラットフォーム各社は直接の体験や専門性を伴うオリジナルコンテンツの確保を急いでいる。

Xは8日、既存の収益分配プログラム参加者を対象に、新たな「オリジナルコンテンツ報酬」プログラムの申請対象を順次広げ始めた。Naverも、AI検索で実際に引用されるコンテンツや特定分野での専門性を基準に、クリエイターの選定と支援を進めている。

両社ともクリエイター支援を掲げるが、求めるコンテンツは異なる。Xはホームタイムラインでユーザーの関心を集める独自投稿の確保を重視するのに対し、NaverはAIによる回答の根拠として使える経験ベースの専門コンテンツを重視している。

クリエイター向け報酬は、単に閲覧数や参加実績に応じて分配する仕組みから、プラットフォームが必要とするコンテンツの供給を促す制度へと性格を変えつつある。

◆X、閲覧数だけでは報酬対象にならず

Xは7日、従来の「クリエイター収益共有」プログラムを終了した。これとは別に、8日には既存の収益分配プログラム参加者を対象に、新たな「オリジナルコンテンツ報酬」プログラムの申請対象を順次広げ始めた。

新制度では、クリエイター自身が執筆、撮影、制作した文章、写真、動画、グラフィックなどをオリジナルコンテンツとして扱う。ニュースや社会現象に独自の分析を加えた投稿や、既存情報に新たな視点や文脈を与えた論評も報酬対象になり得る。

一方、他者コンテンツの複製や一部改変は対象外だ。動画に字幕やフィルターを加えただけの投稿や、複数の投稿を独自の解釈なしにまとめた内容もオリジナルとは認めない。自動化された手法で制作・投稿したコンテンツや、虚偽または誤解を招く情報も報酬の対象外となる。

もっとも、Xは独創性だけで報酬を決めるわけではない。オリジナルであることは参加の前提条件で、実際の支給額はプレミアム加入者のホームタイムラインで発生した「有効露出」を基準に算定する。

対象となるのは、投稿の半分以上が画面に表示されたユニークな露出に限る。同一アカウントによる繰り返しの表示や、広告、プロモーション、人為的に増やした露出は除外する。

参加にはX Premium、Premium Plus、Premium Businessのいずれかへの加入が必要だ。加えて、直近90日間に返信を除くホームタイムライン上で認証済みユーザーに50万回以上表示され、認証済みフォロワーを500人以上抱えていることが求められる。条件を満たしても、審査を通過しなければ参加できない。

つまり、オリジナルコンテンツを作れば誰でも収益化できるわけではない。独自性に加え、プレミアム加入者の関心を引いた投稿に報酬を配分する設計だ。

この仕組みは、複製型の投稿や参加誘導型の投稿で露出を稼ぐアカウントをふるいにかけ、ホームタイムラインの質を高める狙いがあるとみられる。類似投稿がフィードを埋め尽くせば、新しい情報に触れにくくなり、有料購読の価値も下がりかねないためだ。

◆Naverが重視するのは「AIが引用できる記録」

Naverは昨年3月、AI検索要約サービス「AIブリーフィング」を導入した。Naverが今年5月に公開した資料によると、1月時点でAIブリーフィングに引用されたコンテンツのうち、ブログやカフェなどNaver上のUGCの比率は70%だった。

Naverは同月、今後5年間でコンテンツ生態系に1兆ウォン(約1100億円)を投資する計画を公表した。続く6月には、ブログ、カフェ、知識iN、プレミアムコンテンツのクリエイターを対象に、AIフェローシッププログラム「Naver Mate」を開始した。

Naver Mateでは、AIブリーフィングでの引用回数、分野別の専門性、活動状況などを総合評価し、毎月約3000人を選ぶ。選定されたクリエイターには、月30万ウォン(約3万3000円)の基本活動支援金を支給する。

このうち10分野では、各分野の代表クリエイター1人と優秀クリエイター10人ずつ、計110人を「スペシャルNaver Mate」として別途選定する。代表クリエイターには月1000万ウォン(約110万円)、優秀クリエイターには月300万ウォン(約33万円)の追加支援金を支給する。活動支援金の総額は年間約200億ウォン(約22億円)としている。

Naverによると、6月のAdpost支給額、Brand Connectを通じたクリエイター収益、Naver Mateの支援金を合算した規模は、AIブリーフィング導入前の昨年2月に比べて約2倍に増えた。Adpost支給額だけを見ても、同期間で14%増となった。

ただ、この数値には広告収益とブランド協業収益に加え、新設したNaver Mateの支援金も含まれる。増加分のすべてをAIブリーフィング導入の効果とみなすのは難しい。Naverは、AI検索による露出拡大、既存の収益化プログラム、新たな活動支援金が複合的に作用したと説明している。

旅行先での訪問体験、製品の使用体験、地域情報、生活ノウハウといった情報は、一般的な説明だけでは置き換えにくい。こうした記録が蓄積するほど、Naverは国内ユーザーの状況や文脈を反映したAI回答を構築しやすくなる。

Naver Mateはクリエイター支援策であると同時に、AI検索に必要なコンテンツの生産を促す制度ともいえる。コンテンツがAI回答に引用され、クリエイターが露出と活動支援金を得て、再び新たなコンテンツを生み出す循環を想定している。

Naverは年末までNaver Mateをベータ運用し、支援対象をClipクリエイターにも広げる計画だ。AIタブの回答での引用実績も選定基準に反映する方針としている。

◆報酬基準がプラットフォームの編集方針に

XとNaverの報酬制度には、それぞれが何を「良質なコンテンツ」とみなすかという判断基準が織り込まれている。Xはフィード上でユーザーの関心を集めるオリジナル投稿にコストを投じ、NaverはAI検索の根拠となる専門UGCに資源を振り向ける。

見方を変えれば、クリエイター向け報酬は、プラットフォームが必要とするコンテンツを調達するための費用でもある。すべてを自社で生産する代わりに、ユーザーが求める方向のコンテンツ制作を経済的インセンティブで促している形だ。

こうした報酬基準は、クリエイターの活動にも影響を与える。Xでは単純な再投稿より、独自に書いた分析や論評のほうが収益化で有利になる。Naverでは、特定テーマに関する経験や情報を継続的に記録し、AI検索に引用されることが重要になる。

その一方で、クリエイターのプラットフォーム依存が強まる可能性もある。Xはオリジナル性と有効露出を基準に評価し、NaverはAIによる引用実績と専門性を軸に選定する。報酬対象、露出、収益をプラットフォーム側が一体で決める構造だからだ。

算定方法の詳細も十分には開示されていない。Xは有効露出の条件を示したものの、露出当たりの単価や重み付けは明らかにしていない。Naverも評価項目は公表しているが、各項目が選定結果にどう反映されるかという具体的な比率までは示していない。

生成AIによってコンテンツ総量が増えるほど、情報の出どころと直接経験の希少性はむしろ高まる。Xにはユーザーがとどまりたくなるフィードが必要で、NaverにはAIの回答根拠となる情報が必要だ。両社の報酬制度は、プラットフォーム競争が量の拡大から、必要なオリジナルコンテンツを選別し確保する段階へ移っていることを示している。

業界関係者は「生成AIでコンテンツ制作が容易になるほど、プラットフォームでは出どころや直接体験を確認できるコンテンツの重要性が増す」とした上で、「報酬基準はクリエイターの生産の方向性を左右し得るだけに、評価基準の透明性も高める必要がある」と指摘した。

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