8月に大幅上昇したビットコインとイーサリアム。暗号資産市場は再び活気づいている。写真=Shutterstock

ビットコインとイーサリアムが8月に大きく上昇し、冷え込んでいた暗号資産市場に持ち直しの動きが広がっている。一方で、市場の反発が意味するのは、暗号資産が掲げてきた分散化の理想の実現というより、関連技術が伝統金融のインフラに取り込まれていく流れが一段と鮮明になったことだ。

Cointelegraphが1日付で伝えたところによると、ビットコインは8月の1カ月間で26%、イーサリアムは34%上昇した。停滞していた市場には再び活気が戻ったが、価格上昇だけで業界が当初掲げた目標まで達成されたとみるのは難しい。

◆「すでに引き返せない地点を越えた」

ここ数カ月の暗号資産業界では、マイニング事業者の人工知能(AI)分野へのシフトや、コールドウォレットを巡るセキュリティ問題など、悪材料が相次いだ。人員削減や事業停止の動きも続いている。11年続いた暗号資産取引所BitMEXも、9月23日に事業を終える予定だ。

BitMEXは、無期限先物や最大100倍のレバレッジ商品を広く普及させ、暗号資産デリバティブ市場の初期拡大をけん引した取引所として知られる。

Stephan Lutz前BitMEX最高経営責任者(CEO)は、BitMEXの撤退は技術の失敗を意味しないとの見方を示した。BitMEXが切り開いた技術を競合各社が素早く取り込み、市場は新たなインフラを構築する段階から、シェアを争う段階へ移ったという。

同氏は、暗号資産技術はすでに伝統金融の内部に深く入り込んでおり、後戻りしにくい局面に入ったとして、「すでに引き返せない地点を越えた」と語った。

Moon Future Capital創業者のUtkarsh Ahuja氏も、暗号資産業界がこの10年を無駄にしたとは言い切れないと評価する。成果として挙げたのは、決済インフラや決済処理、資産の決済・清算、トークン化への影響だ。

とりわけ、ステーブルコインは金融の決済インフラに組み込まれつつあり、長期的な影響を及ぼす可能性があるという。加えて、事実上あらゆる種類の資産をトークン化できる環境が整ってきたと説明した。暗号資産技術の応用先は金融にとどまらず、エネルギーやヘルスケア、AIなど他産業にも広がっている点を強調した。

分散型金融(DeFi)についても、単なる実験段階を超え、金融インフラに近づいたとの評価がある。Subsquid LabsのCEO、Wanja Oberhof氏は、DeFiによって、運営主体を信用しなくても利用者自身が取引台帳を検証できる金融システムが生まれたと指摘した。

決済は数日ではなく数分で完了し、市場は24時間稼働する。さらに、貸付プロトコルは数十億ドル規模の資金を、透明性を保ったまま処理できるという。その一方で、DeFi業界は技術開発のスケジュールを過度に楽観視し、ユーザー体験の改善には十分対応できなかったとも認めた。

真の成果は、利用者がその技術を意識しないほど自然に日常の製品へ溶け込んだときに現れる――。こうした見方も出ている。

実際、機関投資家を中心にブロックチェーン技術の採用は広がっている。トークン化ファンドやステーブルコイン、ブロックチェーン基盤の決済・清算は、もはや業界内の構想にとどまらない。

ただし、暗号資産が既存の金融システムを置き換えるのではなく、その内部に吸収されつつある点は、初期の支持者が思い描いた姿とは異なる。規制面でも制度化を後押しする動きが進む。欧州連合(EU)は暗号資産市場規則(MiCA)を施行し、米国でも暗号資産を単なる規制対象にとどめず、制度的な枠組みを整備しようとする動きが続いている。

その結果、市場の正当性は高まった半面、初期にあった急進的な空気は薄れたとの見方もある。

◆利用者は5人に1人、それでも残る逆説

暗号資産が約束した未来が、すべて実現したわけではない。Dentacoinは歯科業界を変えるには至らず、ビットコインもあらゆる戦争を止める存在にはならなかった。イーサリアムもなお、グローバル金融の基盤インフラにはなっていない。

それでも利用者層は大きく広がった。Pew Research Centerによると、2026年時点で米国の成人の19%が、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産に投資、取引、または利用した経験があると答えた。およそ5人に1人の水準だ。

ただ、利用者が増えても暗号資産が簡単になったわけではない。複数のネットワークやウォレット、取引所、ブリッジ、入出金経路をまたぐ構造が、むしろ複雑さを増幅させた。

国境を越える資産を志向してきた暗号資産が、実際には各国の規制体系に左右されるという逆説も浮かび上がった。自己保管(セルフカストディ)も、その代表例とされる。ビットコインの価値が上がるほど、秘密鍵を自ら保管するリスクと負担も大きくなるためだ。

コールドウォレットを狙ったハッキングやセキュリティ脅威が続くなか、中央集権的なカストディを前提とする上場投資信託(ETF)などの商品が、一般利用者にとって現実的な選択肢として定着しつつある。

結局のところ、今回のビットコイン相場の上昇が示したのは、暗号資産が当初の約束をすべて果たしたという事実ではない。初期の企業やプロジェクトの多くは姿を消し、国家や中央機関の統制から離れた金融という理想も薄れた。

その一方で、ステーブルコインやトークン化、ブロックチェーンによる決済・清算といった技術は、伝統金融の一部として着実に根付きつつある。暗号資産は金融を代替する方向ではなく、金融システムのインフラに組み込まれる形で影響力を強めている。

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