生成AIに特徴的とされてきた語彙が、人が執筆・編集した文章にも広がりつつある。単語だけを手がかりにAI生成文を判定する手法の信頼性が低下する可能性があるとする分析結果が示された。
TechRadarが伝えたところによると、計算言語学者でHumanizeMy.ai創業者のフィラト・ムフチ氏は、2019年から2026年にかけてarXivで公開された計算言語学、神経科学、確率論分野の要旨1万8989件を分析した。調査では、ChatGPTが普及した2022年末を境に、「delve」「intricate」「underscore」「showcase」「nuanced」など、AI生成文で頻出するとされる語の使用頻度を比較した。
計算言語学分野では、これらの語の出現頻度は2022年に1万語当たり1.9回だったのに対し、2024年には14.0回へと約7倍に増えた。神経科学でも同期間に約5倍増加した。一方、比較対象とした確率論では0.9回から1.3回への小幅な増加にとどまり、信頼区間も重なったという。研究では、分野ごとの生成AI活用の度合いの差が、語彙の増加幅にも表れた可能性があるとみている。
AI生成文を象徴する語としてたびたび挙げられてきた「delve」は、2024年には対象要旨の2.75%に出現したが、2026年には0.12%まで低下した。ただし、2026年のデータは上半期分までの暫定的なサンプルで、最終的な数値は変動する可能性がある。研究では、AI特有の表現が一時的に急増した後、執筆者が意識的に回避するようになり、一部の語は減少に転じた可能性を指摘している。
重要なのは、特定の単語が含まれているからといって、その文章をAIが作成したと断定はできない点だ。研究者自身も、2022年以降の要旨の相当数について、AIで下書きや推敲を行った後に人が編集した可能性があると認めている。こうしたAI由来の表現が人間名義の文章に蓄積されれば、過去の人間の文章を基準にした検知器では誤検知が増えるおそれがある。逆に、最新の文章を学習した検知器は、AIの影響を受けた文体そのものを人間の通常表現として取り込んでしまう可能性もあるという。
今回の研究は、あくまで「学術要旨」に限ったプレプリントであり、AIが別のAIの文章を書き換えて検知を回避できるかどうかを実験したものではない。そのため、「AI文体が人間の文体を全面的に変えた」と結論づける内容ではない。一方で、単語リストだけに依存して人間の文章とAI生成文を見分ける手法には、すでに限界が生じつつあることを示す結果といえそうだ。