AIはセキュリティソフトの代替にとどまらず、老朽化したセキュリティインフラの更新需要を押し上げている。写真=Shutterstock

Palo Alto Networksのニケシュ・アローラ最高経営責任者(CEO)は、AIの普及によって企業の既存のサイバーセキュリティ体制が限界に近づいているとして、世界全体で約1兆ドル(約150兆円)規模のセキュリティインフラ刷新が必要になるとの見方を示した。米CNBCが1日(現地時間)に報じた。

アローラ氏は、AI普及前の前提で構築されたレガシーなセキュリティインフラでは、自動化された脅威への対応は難しいと指摘した。7年から10年前に整備されたシステムは、AIがもたらす機械のスピードに対応できるようには設計されていないとし、「サイバーアーキテクチャを再考すべきだ」と強調した。

企業がAIを業務やサービスに本格導入するには、セキュリティ体制の再設計が前提になるというのが同氏の認識だ。AIは防御の高度化に役立つ一方で、攻撃側にも脆弱性の探索や悪用を加速させる手段を提供し、既存の防御体制を維持する企業の負担を押し上げているという。

こうした見方は、同社の業績見通しにもにじむ。Palo Alto Networksが同日発表した第4四半期決算は市場予想を上回り、新年度見通しも強めの内容となった。

アローラ氏は決算発表の場で、「自動化された脅威は即座に動き出す。それを防ぐには、世界全体で約1兆ドルに上るサイバーセキュリティ負債を近代化する必要がある」と述べた。ここでいう「サイバーセキュリティ負債」とは、過去の前提で積み上がったレガシーインフラや、先送りされてきたセキュリティ投資需要を指す。

市場の見方も変わってきた。年初には、高度化したAIモデルが既存のセキュリティソフト市場を揺るがすとの懸念が投資家の間で強く、Palo Alto Networksを含むサイバーセキュリティ関連株が売られる場面もあった。

その後は、攻撃者側も同じ技術を武器として利用できる点に注目が集まり、AIはむしろセキュリティ需要を押し上げる要因として受け止められ始めたという。

アローラ氏は、こうした認識の変化が投資家心理の急反転につながったと説明した。「9カ月前までは、AIが市場を根こそぎ奪うように見られていたが、今はそうではない。私たちもその機会をともに迎えることになる」と語った。

転機として同氏が挙げたのは、年初に登場したAnthropicの「ミトス」モデルだ。このモデルがソフトウェアの脆弱性悪用に容易に使えると知られたことで、企業がサイバーセキュリティをより深刻に捉え始めたとした。

さらに同氏は、「顧客は準備ができていないと8年間言い続けてきたが、ダリオ・アモデイがミトスを出した、その一件で認識が変わった」と述べた。Palo Alto Networksの株価は4月7日以降に113%上昇し、それ以前の2026年序盤は軟調に推移していたという。

Palo Alto Networksはこうした需要を見込み、8月に「Frontier AI Critical Defense Program」を正式に開始した。高度なAIモデルを用いて顧客企業の防御体制を検証し、脆弱性の特定やセキュリティインフラの近代化を支援する内容だ。

アローラ氏は、このプログラムを巡って約2000社と協議したことも明らかにした。

一方で、関連投資が短期間に一気に実行されるわけではないとの見方も示した。「すべてが次の四半期に起きるわけではない」としたうえで、AIによってサイバーセキュリティ業界の機会の規模と持続期間は根本的に拡大したと述べた。

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