SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」 写真=Shutterstock

SpaceXは、AIデータセンター運営の統括をStarlink幹部のマイケル・ニコルス氏に切り替えた。データセンター部門では主要人材の流出が続き、仮設設備の障害でAIモデルの学習に支障が出たとの指摘もある。大口顧客を抱える中、同社は運用の立て直しを急いでいる。

ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが9月1日(現地時間)に報じたところによると、ニコルス氏はここ数週間で複数のデータセンター上級幹部が退社した後、xAIのインフラ統括を引き継いだ。SpaceXはGoogleやAnthropicなど計算資源の大口顧客を抱えており、データセンターの安定運用を示す必要があるという。

SpaceXのデータセンター事業は、短期間での立ち上げと低コストを強みとしてきた。同社は第2データセンターで、最初の2基のコンピュートクラスターを業界一般の約4分の1のコストで稼働させたとしている。ただ、どの費用を含むのかは明らかにしていない。

一方で、急速な増設の過程で仮設設備への依存が高まっていることが課題として浮上している。xAIの主要ハードウエア拠点は、移動式ガスタービン、TeslaのMegapackバッテリー、100台超の移動式冷却機を使って稼働を開始した。関係者は、こうした仮設設備で発生した障害がAIモデルの学習の妨げになったと指摘している。稼働率も社内目標の99.9%を継続的に下回っていたとされる。

テネシー州とミシシッピ州の一部施設では、計算容量の拡大を急いだ結果、数カ月にわたって予備の冷却設備や予備電源を持たないまま運用していたという。その後、SpaceXはメンフィスのハブの外で計画していた新たなデータセンター整備を遅らせ、テキサス州の候補地でも日程に遅れが出ているとされる。

こうした遅延は、2026年末までに2ギガワット(GW)超の計算容量を確保するというSpaceXの目標にとって逆風となる可能性がある。6月時点で公表していた稼働容量は約1.4GWで、目標達成には追加増設が必要だ。

人員不足を補うための社内配置転換も進んでいる。7月にインフラ責任者のジェイク・パーマー氏が退社した後、SpaceXはロケット部門とStarlink部門から人材をデータセンター部門に振り向けた。FalconとDragonのロケットラインで上級生産管理を担っていたウェスリー・サランドロ氏や、テキサス州スターベースで製品支援責任者を務めていたロガン・マッコネル氏がデータセンターチームに加わった。Neuralink出身エンジニアの採用や、土木エンジニアの募集も進めている。

データセンター運用の安定性は売上にも直結する。SpaceXのAI関連売上高は2026年4〜6月期に26億ドルとなり、前年同期の7億3700万ドルから大幅に増加した。Googleは約11万基のNVIDIA製GPUを対象に、月額9億2000万ドル規模の計算資源契約を結んだとされる。Anthropicも、SpaceXの「Colossus」システムを月額最大12億5000万ドルで利用していると伝えられている。

大口顧客を確保した一方、データセンターの障害が長引けば売上への直接的な影響は避けられない。問題解決に向けた追加費用の発生や、有償顧客向けに提供できる計算資源の縮小につながる可能性もある。

イーロン・マスク氏は別途、テキサス州バストロップで、自社のガスタービン向けブレードとベーンを生産する鋳造工場を建設していると明らかにした。ガスタービンの配備時期を最大18カ月前倒しできるとしている。一方、NAACPは、メンフィス拠点で適切な許可を得ないままタービンを運用したとしてSpaceXを批判した。

SpaceXのAIデータセンター事業では、増設のスピードだけでなく、安定稼働をどう証明するかが主要課題になっている。GoogleやAnthropicとの契約を背景にAI事業が急拡大する中、ニコルス氏が人材不足と設備障害をどこまで早期に収束させられるかが、今後の計算インフラ拡大を左右しそうだ。

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