Appleが進めてきた排出削減の取り組みが、AI投資の拡大局面で試されることになりそうだ。ティム・クック氏の在任中に同社は温室効果ガス排出量を大きく減らしてきたが、今後AI関連のインフラ投資が本格化すれば、2030年に掲げる気候目標の達成が難しくなる可能性がある。
ITメディアのThe Vergeによると、Appleの2025年の温室効果ガス総排出量は約1530万トンと、2015年比で60%以上減少した。Appleは2030年までに排出量を2015年比で75%削減し、残る排出分は高品質の炭素除去で相殺して、事業全体でカーボンニュートラルを実現する目標を掲げている。
排出量は2021年以降、減少基調が続いてきた。ただ、2025年は前年並みにとどまった。Appleは、事業規模が拡大する中でも排出量の増加を抑えたと説明している。
サプライチェーンの脱炭素でも、Appleは比較的高い評価を受けてきた。Stand.earthは2023年、Apple、Dell、Google、HP、Microsoft、NVIDIAのうち、サプライチェーンに対して100%再生可能電力の目標を求めていたのは当時Appleだけだったと指摘した。
Greenpeace東アジアも2025年の評価でAppleにB+を付与した。Appleによると、直接のサプライヤーは昨年、20GW超の再生可能エネルギーを調達したという。
一方で、環境対応を巡る論争もあった。Appleは2023年、一部のApple Watchの組み合わせを同社初のカーボンニュートラル製品として打ち出したが、環境団体は、サプライチェーンにおける電力使用や排出量の開示が不十分で、検証が難しいと批判した。
この表示を巡っては、虚偽・誤認広告に当たるとして、消費者が集団訴訟を提起した。カリフォルニア州の連邦地裁は今年、この訴えをいったん棄却した上で、原告側に修正の機会を与えている。
今後の最大の変数はAIだ。GoogleとMicrosoftでは、AI向けデータセンターや半導体需要の拡大を背景に、足元で温室効果ガス排出量が増加している。
Appleでも、高性能チップやクラウドインフラへの投資が拡大すれば、同様の圧力がかかる可能性がある。ただ、現時点ではAIがAppleの排出量増加の直接要因になったと裏付ける結果は確認されていない。
ジョン・ターナス新CEOの体制下では、AI投資を拡大しながら、絶対排出量の削減と再生可能エネルギーの拡大を両立できるかが焦点となる。クック氏が築いた環境面でのレガシーを維持できるかが、新体制の重要な課題となりそうだ。