ビットコインを単体の値動きではなく、ポートフォリオ全体へのリスク寄与で捉え直したのが今回の報告書の特徴だ。写真=Reve AI

ビットコインが高値から約50%下落した局面でも、伝統的な資産配分に少額を組み入れることで、リスク調整後リターンの改善が見込める――。BlackRockは、ビットコインを単独資産の高いボラティリティだけで評価するのではなく、既存資産と組み合わせた際のポートフォリオ全体への効果に着目すべきだとの見方を示した。

9月1日付のBitcoin Magazineによると、BlackRockは報告書「ビットコイン再考:依然としてポートフォリオ分散の手段か」を公表した。報告書では、ビットコインが2025年10月の高値から約50%下落した後でも、機関投資家にとって組み入れの妥当性はなお維持されていると評価した。

分析の焦点は、ビットコイン自体の価格変動ではなく、ポートフォリオ全体のリスク・リターン特性にある。BlackRockは2026年5月29日までの10年間のローリングデータを基に、伝統的な株式・債券の60対40ポートフォリオと、ビットコインを一部組み入れたポートフォリオを比較した。

それによると、60対40ポートフォリオの年率リターンは約9.9%、年率標準偏差は約10.1%だった。ここにビットコインを1%組み入れると、年率リターンは約10.9%に上昇し、標準偏差は10.3%と小幅な増加にとどまった。

組み入れ比率を2%に引き上げた場合、年率リターンは約11.8%、標準偏差は約10.6%となった。リターンは約1.9ポイント高まる一方、ボラティリティの増加は約0.5ポイントにとどまった。

リスク当たりの収益性を示すシャープレシオも改善した。60対40ポートフォリオでは0.81だったのに対し、ビットコインを1%組み入れると0.90、2%では0.96に上昇した。

最大ドローダウンの差も大きくなかった。既存ポートフォリオはマイナス20.3%、ビットコインを1%組み入れた場合はマイナス20.9%だった。BlackRockは、あくまで過去データに基づく試算だとしたうえで、ビットコインを単独資産としての変動性だけで判断すると、ポートフォリオ全体での分散効果を見落とす可能性があると指摘した。

今回の分析で繰り返し示された配分の目安は、ビットコインの1〜2%組み入れだ。先行研究でも、リスク寄与度を基準に同程度の比率を提示してきたとしている。

BlackRockは以前から、ビットコインを1〜2%組み入れた場合のリスク寄与度は、伝統的な60対40ポートフォリオに大型テクノロジー株を1銘柄追加した場合に近い水準になり得るとみていた。一方、2%を超えると、ポートフォリオ全体に占めるビットコインのリスク寄与度が不均衡に大きくなる可能性があるとした。

報告書は、引き受けるリスクに対して得られるリターンにも言及した。BlackRockは、ビットコインを1%または2%組み入れた場合、いずれも上乗せされるボラティリティを上回る追加リターンが期待できると分析している。

もっとも、BlackRockは1〜2%をすべての投資家に共通する最適比率として示したわけではない。適切な組み入れ規模は、投資家の流動性ニーズや投資期間、ガバナンス上の制約、リスク選好によって変わり得ると説明した。

こうした分析は、BlackRockのビットコイン現物ETF事業とも重なる。BlackRockは2024年1月、ビットコイン現物ETF「iShares Bitcoin Trust(IBIT)」を上場した。

IBITは上場から1年を待たずに運用資産が500億ドル(約7兆5000億円)を超え、その後は世界有数のビットコインETPへと成長した。

米国のビットコイン現物ETF市場におけるIBITの存在感も大きい。Bitcoin for Corporationsの集計によると、米国のビットコイン現物ETFが保有するビットコインは合計約125万BTCで、総発行上限2100万BTCの約6%に相当する。

このうちIBITの保有量は約77万5000BTCで、米国の現物ETF全体の保有量の60%超を占める。

BlackRockは、今回の分析をビットコインが史上最高値を更新していた局面ではなく、急落後に示した点にも意味があるとしている。直近の調整要因としては、レバレッジポジションの清算、ETPへの資金流入の鈍化、ビットコインを積み増してきた企業需要の減速を挙げた。

一方で、こうした調整がビットコインの長期投資の根拠を損なうものではないともみている。むしろ、市場のポジショニングが調整された局面と捉え、供給量が固定されている点、分散性、特定国の発行体に依存しない特性はなお有効だと評価した。

機関投資家のビットコイン評価の枠組みも変わりつつあるという。かつては「これほどボラティリティの高い資産を保有できるか」が主な論点だったが、現在は組み入れ比率とリスク寄与度、既存資産との相関、流動性、最大ドローダウン、期待収益を総合的に見極める議論へ移っているとしている。

BlackRockは企業についても、ビットコインを他の戦略資産に近い考え方で扱えるとした。まず投資目的を明確にし、許容できるリスク寄与度を設定したうえで、流動性やガバナンス要件を踏まえて組み入れ比率を決め、その後は市場環境と投資前提を定期的に見直すという進め方だ。

ビットコインの高い変動性を前提にしつつも、ポートフォリオ全体のリスク調整後リターンを改善できる余地があるという今回の分析は、機関投資家の資産配分戦略にも影響を与えそうだ。

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