上院での審議入りに向けた手続き採決を9月15日に控える「クラリティ法」(写真=Reve AI)

米暗号資産業界が最重要法案と位置付ける市場構造法案「クラリティ法」を巡り、年内成立への不透明感が強まっている。米上院は9月15日、審議入りに向けた手続き採決を予定しているが、超党派で必要となる60票の確保や倫理条項を巡る調整がハードルになっている。

1日付のCNBCによると、業界内では2026年中の成立は難しいとの見方が広がっている。クラリティ法は、暗号資産市場の規制枠組みを整備し、デジタル資産の監督権限について米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の役割分担を明確にする法案だ。暗号資産企業の登録要件やマネーロンダリング防止規定も盛り込み、業界が長年求めてきた中核法案とされる。

上院は8月の休会前に本格採決まで進められなかった。ジョン・スーン上院共和党院内総務は、議会再開直後の9月15日に法案審議入りに向けた採決を実施する方針を示している。ただ、これは最終採決ではなく、本会議での審議や追加交渉がなお残る。争点としては、ステーブルコインの報酬の扱いに加え、ドナルド・トランプ大統領と家族の暗号資産関連の利害関係を巡る倫理条項が挙がっている。

ルーベン・ガイェゴ民主党上院議員(アリゾナ州)は、ワイオミング州で開かれたブロックチェーン・シンポジウムで「60票を確保するには、適切な倫理条項を盛り込み、残る論点を整理する必要がある」と述べ、超党派での合意形成が先決だとの認識を示した。SALTのジョン・ダーシー最高経営責任者(CEO)もCNBCに対し、「個人的には成立にやや悲観的だ。中間選挙を前に、この規模の法案が通るケースは多くない」と語った。

こうした不透明感は、暗号資産業界が2024年の大統領選で投じた政治資金の規模とは対照的だ。業界と関連政治団体は2024年選挙で2億ドル(約300億円)超を支出し、暗号資産に前向きな候補者の当選を後押しした。こうした動きを背景に、ワシントンの規制姿勢にも変化が生じた経緯がある。

◆法案不成立でも当面の影響は限定的

もっとも、法案が成立しなくても業界への打撃は当面限定的との見方もある。トランプ政権発足後、SECとCFTCは従来より前向きな規制姿勢を示しており、通貨監督庁(OCC)など他の金融規制当局もデジタル資産規制の緩和に向けて動いているためだ。トランプ大統領も8月の暗号資産サミットで、政府は「開拓者と開発者のための明確な規制フレームワーク」の整備に注力していると述べた。

包括的な市場構造法がなくても、SECとCFTCによるルール整備で一定の不確実性を和らげられるとの見方もある。スナイナ・トゥテジャ前米連邦準備制度理事会(FRB)イノベーション責任者は、両機関がルール策定による対応を協議しているとしたうえで、「完璧ではないが、それでも前進だ」と評価した。ステラ開発財団のデネル・ディクソン代表も、今後2年は既存規制を活用しつつ、次期政権でも維持される先例を築く必要があると主張した。

◆長期投資には法律に裏付けられた枠組みが必要

一方で、長期の資本投資を呼び込むには、法律に基づく明確な規制枠組みが欠かせないとの指摘も強い。Chainlink Labsで機関・市場開発を統括するアンドリュー・マコーミック氏は、規制枠組みが整った地域と異なり、米国のように2〜4年ごとに政策が大きく変わり得る市場では資本配分が難しいと指摘した。政権や議会勢力が変わっても維持される法律があれば、企業や投資家は長期資金を投じやすくなるという。

政治面の不確定要素も残る。アンドリュー・クオモ前ニューヨーク州知事で、OKXの取締役会メンバーは、クラリティ法が中間選挙前に成立せず、民主党が下院を奪還した場合、議会とトランプ政権の規制を巡る対立が長期化する可能性があると警告した。

9月15日に予定される上院の手続き採決は、暗号資産業界が求めてきた法制度整備の行方を占う重要な節目となる。業界にとって法案成立はなお最優先課題だが、仮に成立がずれ込んだ場合でも、現行の規制枠組みとSEC・CFTCのルール整備を活用しながら事業を継続する構えだ。

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