8月の米国株市場では、弱気材料で売られていた銘柄の買い戻しが目立った。AIによる代替懸念や成長鈍化への警戒、個別企業を巡る不透明感で下落していた銘柄が、好決算や需給改善を受けて見直された。
8月31日付のCNBCによると、ジム・クレイマー氏は8月最終取引日の振り返りとして、S&P500の上昇銘柄の多くが、AI懸念や成長減速への警戒を業績と需給の変化で跳ね返したと指摘した。
代表例の一つがModernaだ。Merckと共同開発する試験段階の黒色腫ワクチンで有望な結果を公表し、8月のS&P500で上昇率上位に入った。
新型コロナウイルスワクチン需要の減少後、同社株は数年にわたり上値の重い展開が続いていた。ただ、メッセンジャーRNA(mRNA)技術が再び大きな成果につながるのかを巡る懐疑的な見方は、今回の発表で後退した。クレイマー氏は「奇跡的で、市場の反応もまた驚くべきものだった」と評した。
8月相場では、企業向けソフトウェア株の戻りも鮮明だった。Palantir、Veeva Systems、Salesforce、ServiceNowは、AI時代に既存ソフトの競争力が低下するとの見方から売り圧力を受けていた。
これに加え、ソフトウェア株の下落に大きく賭けていた高レバレッジ運用のヘッジファンド「Situational Awareness」のポジションも相場変動を増幅させた。同ファンドは7月末に取引を清算した。
クレイマー氏は8月相場について、「ファンド清算の余波が、この1カ月の値動きの相当部分を左右したのは驚きだ」と述べた。需給ショックが和らいだことで、再び個別企業のファンダメンタルズに目が向かったという。
個別では、Palantirが売上成長と収益性を両立できる銘柄として再評価された。Salesforceも堅調な四半期決算を受け、いわゆる「SaaS終焉論」への警戒が和らいだ。
ServiceNowは、既存事業にAIを取り込めることを示したことで買われた。ライフサイエンス業界向けに強みを持つVeeva Systemsも、AIが事業を脅かすとの見方が行き過ぎだったとして反発した。クレイマー氏は「極端に売り込まれていたソフトウェア株の戻りは息をのむほどだった」と語った。
Gartnerも上昇銘柄に加わった。Anthropicの「Claude」など生成AIモデルの普及で技術調査需要が減るとの懸念があったが、実際の事業にはその影響が明確には表れていないというのが同氏の見方だ。
ソフトウェア以外では、Newmontが金価格持ち直しの兆しを追い風に上昇した。金価格は昨年から2026年初めにかけて急騰した後に高値を付け、その後の回復基調が金鉱株を支えた。
もっとも、クレイマー氏は同業他社の中ではAgnico Eagle Minesをより選好するとした。
Paramount Skydanceも8月の上昇銘柄として挙がった。Warner Bros. Discoveryによる買収提案が遅れる中、先週にはカリフォルニア州司法長官のロブ・ボンタ氏が、初期の合意交渉で同社が「誠実さを欠いた」として、Paramount Skydanceとの会合を取り消した。
市場では、Paramountが買収対価を払い過ぎているとの見方が出ていた。このため、取引成立にブレーキがかかったことが、かえって株価にはプラスに働いた。
Super Micro ComputerとSanDiskは、AIデータセンター向けメモリ需要拡大の恩恵を受けた。Super Micro Computerは、中国事業を巡る調査が続く中でも上昇した。
SanDiskは7月に株価が46%超下落した後、8月に入って急反発した。ただ、株価はなお6月末終値ベースの高値を約33%下回る水準にとどまった。
暗号資産関連株ではCoinbaseも8月の上昇率上位に入った。暗号資産市場の持ち直しに歩調を合わせ、同社株も上昇した。
クレイマー氏は、米政府支出の拡大と国債利払い費の上昇への懸念が、ドル安ヘッジとみなされるハードアセット志向を強め、その流れが暗号資産にも波及したと指摘した。Coinbaseについては、暗号資産市場全体に投資したい投資家にとって、代表的な代理投資先として定着したとも付け加えた。
8月相場の反発は、AIが既存産業を一律に代替するとの見方や、ソフトウェア需要の鈍化懸念、マクロ不安が、企業業績と需給の変化によって修正され得ることを示した。市場では9月も、業績改善が確認される銘柄や需給負担が和らいだ業種を中心に、戻りが続くかどうかが注目されている。