F-35戦闘機に採用されているヘルメット搭載型ディスプレイシステム(HMDS)が注目を集めている。パイロットごとに頭部形状や視線位置に合わせて調整されるこの装備は、単なる保護ヘルメットではない。飛行・戦闘情報をバイザーに表示し、機体の下まで見通せる視界を実現する中核システムとなっている。
米ITメディアのTechRadarによると、F-35には第3世代のHMDSが採用されている。米空軍が2015年に示した推定では、価格は1基当たり約40万ドル。F-16などで使われてきた従来型ヘルメットの4倍超に当たる水準で、パイロットごとに頭部や目の位置に合わせた精密な調整が必要になる点も特徴だ。
中核となるのは、機体外部のセンサーと連動する拡張現実型の表示機能だ。F-35の分散開口システム(DAS)は、機体周囲に配置した6基の赤外線センサーで360度の映像を収集し、それをパイロットのバイザーに映し出す。下方を見ると機体底面ではなく地表の映像が投影され、まるで機体が透明になったかのように周囲を確認できる。航空機やミサイルの探知・追跡情報も同時に表示される。
このHMDSは、従来の戦闘機で用いられてきたヘッドアップディスプレイ(HUD)の役割も担う。速度、高度、進行方向、目標情報、各種センサー情報を視線を外さず確認できるほか、夜間映像もバイザー上に投影される。こうした機能により、F-35は固定式HUDを搭載していない。
DASの長距離探知能力も目を引く。2010年の試験では、試験機に搭載されたF-35用DASが800マイル(約1287キロ)以上離れた2段ロケットの発射を探知し、追跡した。ただし、これはパイロットが800マイル先の目標を肉眼で捉え、直ちに照準できることを意味するわけではない。
もっとも、開発は当初から順調だったわけではない。初期型では映像の揺れや表示ずれ、重量、射出時の安全性などが問題視され、米国防総省は一時、BAE Systemsによる代替ヘルメットの開発も支援した。その後の改良によって代替計画は打ち切られた。製造元のCollins Elbit Vision Systemsは2024年、F-35プログラム向けHMDSの累計納入数が3000基に達したと明らかにしている。
F-35のヘルメットは、高価なパイロット装備というより、戦闘機のセンサー群とパイロットをつなぐ中核的なインターフェースといえる。マーク・ウェルシュIII元米空軍参謀総長が、これを単なるヘルメットではなく「作業空間」と表現したのも、その位置付けを端的に示している。