写真=米ホワイトハウス

米国でCyclospora感染が過去最多のペースで拡大する一方、関連する連邦研究体制が揺らいでいる。予算の未確保に加え、研究拠点の移転方針も重なり、専門人材の流出によって食品汚染源の追跡力や対応力が低下しかねないとの懸念が広がっている。

8月31日付の米ITメディアArs Technicaによると、米農務省(USDA)でCyclospora研究の大半を担ってきた3つのプログラムのうち、2件は2026会計年度予算のめどが立たず、事実上停止した。残る1件は予算を維持したが、トランプ政権がワシントンD.C.近郊のベルツビル農業研究センターの機能をアイオワ州へ移す方針を示しており、人材流出への懸念が強まっている。報道では、現時点でアイオワ州への移転を予定している研究者はいないという。

こうした状況下で、感染は急拡大している。米疾病対策センター(CDC)は8月24日時点で、米国内の感染事例1万7180件が検査で確認され、さらに1万1844件を追加で調査していると明らかにした。入院は922人、死亡は2人。前年の同じ時期に報告された事例は1180件だった。

Cyclosporaは、生鮮野菜や果物を通じて感染が広がる腸内寄生虫だ。大腸菌やサルモネラに比べて研究が難しいとされる。人の腸内でしか増殖しないため、実験室での培養は容易ではない。便中への排出量も一定せず、ゲノムは細菌より大きい。さらに有性生殖を行うため、感染事例の遺伝的な関連性を分析し、単一の汚染源を特定するのも難しい。

研究者の間では、今年の大規模流行を受け、多様な試料を確保して寄生虫の特性解明を進める好機とみる声があった。しかし、予算が途切れた研究チームは、新たな分析ではなく既存試料の保全を優先しているという。この分野はもともと専門家が少なく、仮に予算が復活しても、失われた知見や体制を短期間で立て直すのは難しいとの見方が出ている。

USDAは研究は支障なく継続できるとしている。ただ、人材流出が現実となれば、米国の食品安全研究に与える影響は小さくない。

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