自然言語でAIにコード生成を委ねる「バイブコーディング」の広がりを背景に、シンガポールの開発者コミュニティが活況を呈している。エンジニアでなくても短期間でソフトウェアを形にしやすくなり、ハッカソンや勉強会の開催が増加。これをきっかけに創業へとつながる事例も出始めている。
8月31日付のBusiness Insiderによると、シンガポールには数千のテック系スタートアップが集積している。一方で、サンフランシスコやテルアビブ、ベンガルールと比べると、草の根で広がる開発者文化は相対的に弱いとみられてきた。だが、この2年ほどでAIツールが開発の技術的・心理的なハードルを下げ、状況は大きく変わったという。
代表例の1つが「Natives」だ。サンフランシスコ発のAI Tinkerersのシンガポール支部として始まり、音声エージェントやエージェント型業務自動化をテーマに、デモやワークショップ、ハッカソンを開いている。イベントには毎回100人超が参加し、参加者同士が出会いをきっかけにAIスタートアップを共同創業したケースも出ている。
大規模ハッカソンも盛り返している。シンガポールの開発者グループ65labsが2025年10月に開いたCursorハッカソンには、1000件超の参加申し込みがあった。約300人が24時間で約150件の実際に動くプロダクトを開発し、OpenAI、Anthropic、Google DeepMindなど世界のAI企業も参加した。10社のスポンサーは、優勝チームに総額40万ドル超相当の支援や各種リソースを提供した。
2026年5月に開催されたアジア初の「AI Engineer Singapore」でも、参加者は1000人を超えた。OpenAI、Google DeepMind、Cursor、Cloudflare、Stripeなどが協賛し、起業家や技術者ら92人が登壇した。Vivian Balakrishnan外相もステージに立ち、自身のAIエージェント活用法を紹介した。
とりわけ変化が目立つのは、非エンジニア層だ。経営やマーケティングを学んだ創業者も、Claude CodeやCodex、Cursorといったツールを使いこなし、自らプロダクトを開発している。バイブコーディングは単なる開発速度の向上にとどまらず、ソフトウェア開発の担い手を広げ、シンガポールのAIスタートアップ・エコシステムに新たな人材を呼び込んでいるとの見方が出ている。