ロシアは9月1日から、暗号資産の投資・取引を一部解禁する。非専門投資家を含む個人にも一定の範囲で市場参加を認める一方、国内での暗号資産決済は禁止を維持する。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが8月31日に報じた。ロシアでは「デジタル通貨およびデジタル権利」法の施行により、国民のデジタル資産への投資機会を広げる一方、決済手段としての利用は引き続き認めない。
同法は7月にロシア議会の上下両院を通過し、8月初旬にウラジーミル・プーチン大統領が署名した。暗号資産の投資・取引を制度下に取り込む初の本格的な規制枠組みとなる。
これにより、ロシア居住者は一定の条件を満たせば暗号資産を購入できるようになる。ただし、売買はロシア中央銀行に登録された認可仲介業者を通じて行う必要がある。
取引を扱えるのは、認可を受けた銀行、証券会社、信託管理者、証券取引所、新設されるデジタル預託機関に限られる。デジタル預託機関は、新たに導入されるカストディ事業者の区分に当たる。
既存の暗号資産取引所も、ロシア中央銀行(CBR)から新たな認可を取得しなければならない。認可要件には、自己資本1500万ルーブル以上も含まれる。
CBRは現時点で、認可済みの取引プラットフォーム一覧を公表していない。
非専門投資家にも市場は開放されるが、対象となる銘柄は限られる。一般投資家が購入できるのは、流動性と時価総額が大きい主要銘柄が中心となる。
現時点では、ビットコイン、イーサリアム、テザーのステーブルコインのUSDTが対象に含まれている。ロシア当局は今後、対象となる暗号資産を追加できるとしている。
一方で、こうした制限は専門投資家と輸出入企業には適用されない。
非専門投資家の購入額は、仲介業者1社当たり年間30万ルーブルが上限となる。すべての投資家には、商品特性やリスクへの理解を確認するため、CBRの試験受験も求められる。
国内決済の禁止方針も維持する。憲法上、法定通貨としての地位を持つのはルーブルと、9月1日から段階的に導入されるデジタルルーブルに限られる。
CBRは8月31日の報道資料でデジタルルーブルの開始を正式に発表し、中央銀行デジタル通貨(CBDC)システムの利用対象を複数段階で広げる方針を示した。
海外決済では、ロシア企業が暗号資産を国際決済手段として利用できるようになる。すでに一部企業は、昨年始まった実験制度の枠内で同様の手法を活用してきたが、今回の法施行で恒久的な枠組みに移行する。
これは、ロシアのウクライナ侵攻後に課された法定通貨ベースの制裁や各種制限を回避する手段として位置付けられている。
自己保管型ウォレットへの移転は認められないが、既存保有分の暗号資産はカストディ型ウォレットに預けることで適法に保有できる。海外取引所でのウォレット開設や暗号資産の海外送金は禁止されていないものの、ロシア連邦税務局への申告と国内仲介業者の関与が必要となる。
また、同法が暗号資産を財産として位置付けたことで、譲渡や相続、離婚に伴う財産分与の対象にもなる。ロシアでは最大3000万人が一部の暗号資産を保有していると推定され、日次の取引額は500億ルーブルに達すると伝えられている。
ロシア最大の銀行Sberbankの取締役会副議長アナトリー・ポポフ氏は、認可取引所を通じた年間取引額が、制度化初年度に4兆ルーブルに達する可能性があると述べた。
さらに、取引総額は2028年に5兆2500億ルーブル、2029年に7兆5000億ルーブルへ拡大する可能性があるとしたうえで、投資家が2027年7月に免許を確保した後は成長ペースが一段と加速し得るとの見方を示した。
ロシアは今回、暗号資産を全面的に容認するのではなく、投資と対外決済に限って制度化する道を選んだ。今後は、認可取引所の公表、対象銘柄の拡大、デジタルルーブル導入の進捗が焦点となる。