人工知能(AI)が2026年のフィンテック業界における大規模な人員削減の主因と受け止められている。一方で、実際には収益性の悪化やコスト削減圧力、過去の過剰採用の反動がより大きな要因になっているとの見方が出ている。
TechRadarが8月31日(現地時間)付で掲載したSchwarzwald Capitalのパートナー、ムラド・サリホフ氏の寄稿によると、2026年に世界のフィンテック業界では約1万人分の雇用が失われた。
PayPalは従業員の約20%を削減している。Blockは従業員数を6000人未満まで絞り込んだ。Coinbaseも5月、全従業員の約14%を削減した。
もっとも、各社はこうした再編をAIシフトと結び付けて説明する傾向がある。ドイツ銀行のアナリストはこれを「AI redundancy washing」と表現した。AIを口実に人員削減を正当化し、リストラを戦略的なイノベーションの一環として見せる動きだという。
実際の背景が収益性の低下や、成長優先で膨らんだコスト構造の見直しであっても、あたかもAIが人員を代替したかのように説明する構図だ。寄稿では、米国の採用責任者の約60%が、人員削減を説明する際にAIの役割を強調すると答えた調査も紹介している。
焦点は、AIが大規模な人員削減を正当化できるだけの明確な成果を上げているかどうかにある。売上高10億ドル(約1500億円)以上の企業の経営陣350人を対象にした調査では、AI・自動化技術を試験導入している組織の80%が人員削減を実施した。一方で、削減幅が大きいほど投資収益率(ROI)が高まる傾向は確認されなかった。
AIの全社展開もなお初期段階にある。McKinseyの2025年のグローバル調査では、回答者の88%が少なくとも1つの業務でAIを活用していると答えたが、全社的な展開に着手している企業は約3分の1にとどまった。企業レベルで税引前利益(EBIT)への影響を報告した割合も39%だった。
サリホフ氏は「フィンテック企業は現在、AIを新たな金融サービスの創出よりも、社内業務の自動化とコスト削減に振り向けている」と指摘した。人員削減だけでは持続的な競争優位は築きにくく、AI競争の成否は削減人数ではなく、従来は実現できなかった商品やサービスをどれだけ生み出せるかにかかっているとしている。